VR(仮想現実)はここまで来たか――「東京ゲームショウ2017」(千葉・幕張メッセ、9月24日まで)の「VAQSO」ブースでは、“ニオイを嗅げるVR”を体験できる。バーチャル空間でラーメンやギョーザのニオイに囲まれると、不思議とおなかがすいてくる。
トリコル(東京都品川区)が開発するVRゲーム「カウンターファイト」は、ラーメン屋となってお客さんたちにラーメンやギョーザ、生ビールなどを提供するゲーム。VRヘッドセットに取り付けたデバイス「VAQSO VR」から、映像に合わせてラーメンのニオイ、ギョーザの焼けたり焦げたりするニオイが出る仕組みだ。VAQSO VRは、本体サイズ120(幅)×35(奥行)×15(高さ)ミリとコンパクトなデバイスで、ニオイの入ったカートリッジを挿すことで、小さな穴からニオイを発する。
VAQSOの川口健太郎CEOによると、「今はカートリッジを3個までしか挿せないが、2018年に提供する製品版では5個に拡張する。さまざまなVRヘッドセットに装着可能で、現在のニオイの範囲はテニスボール1個分ほど」という。
ゲームでは、手元のコントローラーを使い、料理を作り提供していく。ラーメンを1つ作るだけでも、スープ投入、麺の湯切り、チャーシューやのり、メンマなどのトッピングがありなかなか難しい。ギョーザは1つ1つフライパンに入れ、焼き具合を見ながら皿に移す必要があり、生ビールもいったん瓶を冷蔵庫で冷やすなどの手間がいる。
あまりに時間がかかりすぎるとお客さんは怒って帰ってしまうので、手早い作業が求められるのだが、これがなかなか難しい。トリコルの池田輝和CEOが「わいわい楽しみながらやってほしいという思いもあるので、少し狙った部分もある」と言うように、コントローラーの感度がやや高いという印象だった。
というのも、筆者がアバウトな性格であることもあり、丁寧に操作しないことで現実では起こらない光景が次々と画面上に展開されていったのだ。スープ用のおたまを床に落とす、煮卵を客に投げつける、フライパンを振りすぎてギョーザを遠くへまき散らす、湯切りした麺を床に落とす、空の丼を客の顔にヒットさせる――お客さんに謝罪をする暇もなく、試遊時間の5分間は過ぎていった。提供できたのは、ラーメン1杯。こんな店では、つぶれるのも時間の問題だ。
焦りと動揺が混ざり合った複雑な思いをしながらも、ラーメンのニオイや、ギョーザ特有のニラ臭さは強烈に記憶に残った。これまで、VRは視覚や聴覚がメインで、触覚や嗅覚、味覚の部分はまだまだ開拓の余地が残っていた。嗅覚が追加されることで、リアリティーはグッと増してくる。ゲームはCGだったが、実写の料理だったなら、なお空腹を誘っていたことだろう。ジュージューとギョーザが焼ける音と、実際に茶色く焦げ付くギョーザの皮、それにニオイが加われば、五感がかなりだまされる。
東京ゲームショウでは、女の子のニオイがするVRや、ナマコの感触を再現したVR、温度や痛みを感じるデバイスなど、VRのさらなる可能性を感じる展示が多く見られた。
風味や視覚情報などが大きく関わってくる味覚についても、今後大きな進展があるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR