クレイク・オブライエン・コーンスィート効果を応用させて画像処理をするという研究がいくつかありますが(例えば[N])、新しいタイプのエッジによる錯視も効果的な画像処理を可能にします。
まずは一例として次の写真を新しいタイプのエッジに起因する錯視に変換してみましょう。元になる写真は次のものです。
この写真の明暗に関するエッジの部分(つまり明暗が大きく変化するところ)に、新しいタイプのエッジに起因する錯視効果を加えたものが次の画像です。これも輪郭の部分を除いて全て同じ濃さであるにもかかわらず違う濃さに見えてしまう錯視画像です。
さて、この新しいタイプのエッジに起因する錯視画像と元画像を合成してみると、次のようになります。
新しいタイプのエッジによる錯視が加わった画像は、元画像より鮮鋭化されていることを確認できますが、さらに元画像に比べて奥行き感も増しているように感じられます。
今回はエッジが起因して起こる明暗に関する錯視の話をしましたが、色については水彩錯視と呼ばれている錯視が知られており([P])、これについては機会があればまたお話ししたいと思います。
引用・参考文献
[A] Hitoshi Arai and Shinobu Arai, Edge-induced illusion generation device,
edge-induced illusion generation method, edge-induced illusion generation
program, printing medium, and recording medium, PCT/JP2017/029433(出願:JST).
[C] T. N. Cornsweet, Visual Perception, Academic Press, 1970.
[F] ジョン・P・フリスビー(村山久美子訳)、シーイング 錯視 – 脳と心のメカニズム、誠信書房、1982 (原著は 1979)
[K] 北岡明佳、錯視入門、朝倉書店、2010.
[T] 高島翠、無彩色における水彩効果 – 墨絵効果の成立条件について、心理学研究、79, (2008)、379-384.
[P] B. Pinna, G. Brelstaff, and L. Spillmann, Surface color from boundaries: a new ‘watarcolor’ illusion, Vision Research, 41 (2001), 2669-2676.
[N] 根津英風, プロジェクターの高画質化の取り組み, NEC技報, Vol.60, No.3 (2007), 94-97.
著者:新井仁之(あらい ひとし)
早稲田大学 教育・総合科学学術院・教授、理学博士。
横浜市生まれ。早稲田大学、東北大学、東京大学を経て現職。
視覚と錯視の数学的新理論の研究により、平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞、1997年には複素解析と調和解析の研究で日本数学会賞春季賞を受賞。
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