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» 2019年02月19日 14時15分 公開

今年の景気後退を占う:「今年、リセッションはない」 プロが言い切る根拠は「ジャポニズム」の再来

リセッションが懸念される世界経済だが、各種指標から見てリセッションにはまだ時間があると説く複眼経済塾のエミン・ユルマズ氏。一方で、19世紀にヨーロッパで起こった日本趣味であるジャポニズムが再来すると話す。

[斎藤健二,ITmedia]

 「今年はリセッション(景気後退)はない。来年はあるかもしれない」。2月17日にマネックス証券と東京証券取引所が開催したイベントで、複眼経済塾のエミン・ユルマズ氏が、昨今の経済情勢を分析し、こう話した。

複眼経済塾のエミン・ユルマズ氏

ドル高、高ボラティリティだった2018年

 「2018年は何を買っても損する年だった。唯一もうかったのは現金」。ユルマズ氏は、18年の投資環境をこう総括した。

 米トランプ大統領が打ち出した減税策によって新規の国債が発行され、世界のドルを吸収する流れが起きた。結果、新興国通貨に対してドルが高くなるドル高が発生。コモディティ(商品)が安くなり、金も売られた。そして日本ではデフレが継続した。これがユルマズ氏の振り返りだ。

 一方で、19年は「米国のリセッションリスクが懸念されているが、米国株、日本株、新興国株とも株が上がる年だ」と話す。

 根拠として挙げたものの1つは4カ月連続で上昇している米連邦輸送指数だ。また、3カ月LIBORと3カ月国債利回りのスプレッドである「TED」も低いままだと指摘する。「TEDは銀行間の借入金利。危機になると銀行の資金ニーズが高まるので上昇する。いまTEDは0.4%程度で、銀行のクレジットリスクはほとんどない」(ユルマズ氏)

連邦輸送指数の状況
銀行間借入金利を示すTEDスプレッドも低いままだ

 リセッションの先駆けとされる逆イールドカーブについても、まだリセッションには時間がかかるはずだと言う。短期国債と長期国債の金利は、通常、長期国債のほうが高くなる。ところが「短期的な見通しが悪くなると投資家は短期国債を売って、長期国債を買いたがる。すると、国債利回りと価格は逆になるので、逆イールドカーブが起きる」(ユルマズ氏)。過去はリセッションの前に必ずイールドカーブが逆転してきたという経緯がある。

 また、米国の景気先行指数(LEI)も上昇している。「リセッションに入る前に景気先行指数は下を向く」(ユルマズ氏)

イールドカーブのフラット化は継続しているが、リセッションが起きるにはまだ時間がかかると見る
景気先行指数(LEI)も上昇傾向にある

なぜ日本株は上がらないのか?

 そんな中、なぜ日本株は上がり切らないのか。「僕は消費税じゃないか? と思っている。増税の分だけ(株価が)ディスカウントしている可能性がある」(ユルマズ氏)

 一方で、長期的に見ると、日本に追い風が吹いているとユルマズ氏は説く。新冷戦対立が起こり、経済のブロック化が進み始めているという見立てからだ。

 「日本の景気後退は、前の(東西)冷戦が終わったころから始まった。日本の戦略的重要性が減って、中国という市場が開放された。これが日本の景気減速に大きく影響してきた。今から逆の流れが起きる。日本の地政学的な重要性が高まって、中国が閉鎖されていく。これによって、奪われたシェアが日本企業に戻ってくる」(ユルマズ氏)

 そして、これからはアンチグローバル化が始まるという。国際化は続くが、世界経済もブロック化されていくとユルマズ氏は言う。

中東を通る線と、東シナ海および日本海を通る線で、新冷戦対立断層があると言う
ブロック経済に逆戻りする傾向を指摘

 そんな中、ジャポニズムが再来したというのがユルマズ氏の主張だ。ジャポニズムとは、19世紀後半にヨーロッパで盛り上がった日本趣味のことで、ゴッホやモネも日本文化に影響を受けた作品を描いた。

 当時の浮世絵に相当するのが、現代のマンガやアニメだという。当時のジャポニズムを主導したのは、日本の磁器をヨーロッパに輸出していた東インド会社。現代の東インド会社はどこかを考えるべきだと話す。

 「ジャポニズムを代表する会社がソニー。いつかソニーの時価総額がAppleを超える日が来ると思っている。ソニーは、映画、音楽、ゲームを持っている世界最大のコンテンツプロバイダーの1つ。任天堂の凄さも、マネタイゼーションではなく、持っているコンテンツの凄さだ」(ユルマズ氏)

 ジャポニズムは当時、半世紀続いたメガトレンド。21世紀はジャポニズムの再来となるだろうか。

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