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「昭和スマアトテレビ」家具調TVノスタルジイの源泉立ちどまるよふりむくよ(3/3 ページ)

» 2019年02月20日 06時00分 公開
[松尾公也ITmedia]
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元ネタは1965年

 昭和スマアトテレビの外観。どこからこんな原型となるようなデザインを持ってきたのかと不思議だったのだが、意外に簡単に元ネタが見つかった。ナショナル「嵯峨」だ。前ページの最後の写真は、そのCMを映したものである。

 パナソニック(当時は松下電器産業)のナショナルブランドでの家具調テレビ「嵯峨」TC-96Gだ。正価7万2500円。1965年10月に発売され、130万台を売った大ヒット商品である。当時の松下は東京オリンピック後の景気後退で販売店網から販売不振の突き上げを食らっており、この嵯峨は起死回生の商品だったという。

photo ナショナル「嵯峨」(パナソニックのWebページより)

 当時のCMはこんなナレーションだ。なんだかすごい:

日本伝統の優雅な美しさを見事に盛り上げたナショナルテレビ「嵯峨」

ウォールナットの肌合いを生かしたデザイン(高級ウォールナット材、3スピーカーの迫力)

黄金シリーズの高性能(黄金回路)

ナショナル人工頭脳テレビ「嵯峨」は通産省デザインのグッズデザイン商品です(19型96G 正価7万2500円)


 黄金回路とは? 人工頭脳テレビとは? グッズデザインとは?

 黄金回路というのは最高品質の回路という意味らしい。

 人工頭脳テレビというのは、今でいうところの「スマート」に近いものかもしれない。

 CMではグッズデザインと発音しているが、これはグッドデザイン受賞製品でもある。当時の受賞製品解説にはこうある:

テレビが、家庭必需品として普及してきたことで、他の家具同様、室内の環境に調和することが望まれてきた。このテレビは、高級家具の要素を取り入れ、格調高く仕上げている。このころから、テレビが居間の中心的な存在としての風格を表現し始めた。


 同時に受賞した松下のステレオセット「宴」も家具調である。居間、お茶の間がテレビを中心とするようになった、そんな流れでできたデザインなのだ。ほぼ同時期に三洋電機も「日本」という家具調テレビを投入していることから、日本の家電業界の大きな流れとしてあったのだろう。

 このデザインは、北欧家具のデーニッシュモダーン様式と、日本古来の「校倉造り」とを導入したものだという。この辺りの経緯は、プロトタイプデザインも含め、ここにまとめられている

 意外なことに、「嵯峨」はモノクロテレビなので、実はモノクロ(1950年代)で見るのが正しいのかもしれない。製品時代は60年代なのだけど。

photo ナショナル坊やとスマアトテレビ

 ところで、我が家にも古いテレビがある。大学生時代から使っていて、今も枕元に置いてある。1978年発売の東芝製ポータブルテレビ「10P102」だ。祖父が病床で使っていたものを譲り受けた。

photo 我が家にある最古のテレビは東芝10P102

 このダイヤルがおもしろい。反時計回りに数字が並んでいるのだ。当時はそんなんでしたっけ?

 VHFとUHFの両方に対応していて、チャンネルをUに合わせると、下のUHFダイヤルが反映される。今はVHFもUHFもなくなってしまったけれど。

photo Uというチャンネルもあります

 もっと大型のテレビを買った後も、けっこう長い間使っていた。ファミコンもこれにつなげていた。優しかった祖父のことを思い出す、想い出の品だ。

 ところで「嵯峨」初号機は、パナソニック本社の松下幸之助歴史館に展示されているそうだ。

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