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残業なくして乾杯♪ アサヒがRPAロボット量産に成功した理由特集・RPAで仕事が変わる(2/2 ページ)

» 2019年02月23日 13時09分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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 RPA導入により、人事データの登録作業はシンプルになった。メールで届いた連絡票は、内容を確認した後にボタンを1つ押せば、ロボット専用の「登録前」フォルダに自動保存される。ロボットは5分おきに登録前フォルダをチェックし、連絡票があれば人事管理システムと勤怠システムに内容を登録。作業が完了すると連絡票を「登録後」フォルダに移し、メールで知らせる。

残業は必要なくなったと佐藤さん

 「手入力は基本的になくなりました。ロボットは人が会社にいないときも登録作業ができ、人のような“うっかり記入漏れ”もありません」と佐藤さんは満足げだ。「今では帰宅前にボタンをポチッとするだけで翌朝には作業が終わっているので、ログデータを確認するだけです。残業は必要なくなりました」(佐藤さん)

 人事業務部は、RPA導入で年間約1300時間の業務量削減に成功した。塚本さんは、「定型的で煩雑な作業を減らし、担当者が本来取り組むべき業務に集中、質を高めることにつなげられました。さらにこれらのシステム導入で培ったノウハウを生かし、経理、営業部門など他の業務領域においても適用範囲を拡大しています」と胸を張る。

今年は業務時間の削減効率も重視

 塚本さんの所属する業務システム部は、RPAやAI(人工知能)チャットボットの導入により、グループ各社の業務効率化を本格的に進めている。RPAについては18年5月からグループ5社でサーバ型の「UiPath」をテスト運用し、7月には29社に拡大した。全社導入を図る上では管理のしやすさが重要だった。

グループ企業への横展開を進める塚本さん

 「昨年は、売上データの転記など短期間で開発できるものを中心に80の業務へRPAを導入しました。現在も毎月数本ずつ開発しています。ただ、難易度の低いものは効果も小さいため、今年は業務時間の削減効率も重視していく方針です」(塚本さん)

 アサヒグループがハイペースでRPA化を進められる理由は何か。業務各社には独立したシステム部門が存在せず、ノウハウを持つアサヒプロマネジメントとアサヒグループホールティングスのIT部門が旗振り役となったことが大きい。目標設定から製品の選定、開発、運用までを一貫して行える上、小規模なトライアルで成功事例を作り、横展開する理想的な形になった。

 塚本さんのチームは、それぞれの業務会社にも「RPA推進担当」を最低でも1人は置くことを求めた。これにより、ヒアリングやRPA化する業務の選定なども確立した手順で進められる。窓口になる人がいればサポートや改修もスムーズだ。

 RPA化の効果はグループ企業に口コミで広がり、現場からの“持ち込み企画”も増えたという。「今では開発待ちの業務リストが(ディスプレイの)一画面では収まらないくらいになっています」(塚本さん)

 ロボットが増えてくると、管理されない“野良ロボット”が問題になることもあるが、アサヒグループでは今のところ問題ない。全てのロボットに管理番号と社員番号がふられ、資産として登録することで完全に一元管理しているという。

 「今後は各ロボットの働きぶり(導入の効果)を評価する仕組み作りも検討していきます。もっともっと育てていきたいですね」(塚本さん)

【訂正:2019年2月25日16時00分更新 ※一部社名を修正しました】

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