グレーゾーンをめぐる問題は、政府が今国会での提出を目指している著作権法改正案でも議論が続けられている。海賊版サイト対策を目的とした改正案だったが、本来の目的とは離れた「ダウンロード違法化の範囲拡大案」が盛り込まれており、漫画家や法学者、業界団体などから反対意見が続出している。
2009年の法改正で、映画・音楽の著作物については、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする行為は私的使用の範囲でも違法に。12年の法改正では、同じく違法にアップロードされ、有償で提供される映像や音楽ファイルをダウンロードする行為は刑事罰の対象になった(親告罪)。
今回の改正案では、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする行為を私的使用の範囲でも違法とする範囲を、音楽・動画ファイルから漫画、論文など著作物全般に拡大。識者からは、刑事罰の要件を「原作のまま、丸ごと複製すること」に絞り込み、民事規制の範囲も限定的にすべきと指摘されている。
ダウンロード違法化の範囲拡大については、ウイルス罪と同様に「違法と知りながら」の解釈があいまいで、警察による職権濫用の恐れがあることを懸念する声がある。
改正案をめぐっては、自民党が3月8日の総務会で了承を見送り、違法ダウンロードに関する項目の削除を求める方針を固めたと、産経ニュースが報じている。しかし、今国会での成立を目指す方針は変わらず、修正案がどのような内容になるかも不明で、まだまだ予断を許さない。ダウンロード違法化の対象になる著作物には、プログラムなども含まれる。漫画業界だけでなく、IT業界含めて幅広い分野で注視していくべきだろう。
後々禍根を残しそうな立法が成立しそうなときは、慎重に議論を進め、ときにはパブリックコメントなどで意見を表明することも重要だ。ウイルス罪についても声を上げ続けていく必要があるだろう。仮に警察が積極的にグレーゾーンに踏み込む意思を示したのであれば、新しい技術の芽はそのたびに摘まれてIT業界は萎縮し、日本の競争力が下がってしまう可能性も否定はできない。
こうした事態を受け、3月7日にGitHub上で「みんなで逮捕されようプロジェクト」なるジョークページがhamukazuさん(加藤公一さん)により公開された。
加藤さんはレコメンデーションや自然言語処理のアルゴリズムなど機械学習に詳しいエンジニア。3月5日にTwitter上で「JavaScriptで『意図しない動作』で逮捕されたり補導されたりする件、エンジニアみんなは団結して抗議する意味で、進んで逮捕されにいくのはどうだろう」と提案し、自ら作成した。
ページ内では、アラートの無限ループを起こすJavaScriptのコードを公開している。該当プログラムをコピペできるこのページへのリンクを貼ったことで、記者もウイルス罪の疑いで摘発されてしまうのだろうか。
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