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段違いの高画質、仕事に使える360度カメラ「THETA Z1」荻窪圭のデジカメレビュープラス(4/4 ページ)

» 2019年06月21日 18時04分 公開
[荻窪圭ITmedia]
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THETA Z1は使い勝手もぐっとよくなった

 と、以上はクオリティの話。

 Z1は使い勝手や頑丈さも上がってる。

 まず、ボディがマグネシウムになり、さらに底面の三脚穴が金属になった(細かい事だけど、昔、THETAでここを破損したことあるので……)。

 ボディには小さな表示パネルを搭載。

シャッターボタンの位置が少し低くなり、下部に表示パネル設置

 今までのTHETAはスマートフォンにつながない限り、細かいバッテリーの残量も分からなかったのだ。Z1はバッテリー残量と残り撮影枚数が常時表示される他、撮影モード、セルフタイマーのオンオフ、BluetoothやWi-Fiの状態も分かる。

 側面にFnキーが増設され、デフォルトでセルフタイマーとして(あるいは本体のカスタム設定を登録することもできる)使えるので、THETA単体で撮影したいときに便利だ。手に持って撮るとどうしても指が映り込んでしまうので、THETAを自撮り棒やミニ三脚につけ、セルフタイマーを使って撮りたいことが多い。

 パネルのおかげで単体での使い勝手は上がったが、基本的にはスマートフォンと接続して使う。本体がモニターを持たないので撮影した画像の確認もできないので、スマートフォンは必須だ。

スマートフォン用アプリ(画像はiOS版)ではWi-Fiを通してプレビューを見ながら撮影できる。ここでシャッターボタンをタップするか、音量下キーでシャッターを押せる

 アプリは従来と共通だが、アプリ自身も昔に比べるとバージョンアップされて、使い勝手が、特にTHETAとWi-Fi接続するときの使い勝手が良くなった(iOS版の場合)。

 最新版ではiPhoneが他のWi-Fiを掴んでいても、THETAアプリ上からTHETAへの接続に切り替えることができる。

スマートフォンが他のWi-Fiを掴んでいてもこのダイアログ経由でTHETAに繋ぎ直してくれる。

 アプリ経由ならTHETA Z1の全機能にアクセスできる。

 オートモードでもノイズ低減やHDRなどを使えばいろんなシーンに対応できる。

オートモード時も「Option Setting」をタップして、「ノイズ低減」「DR補正」「HDR合成」を使うことができる

 ノイズ低減は明るい場所では連写+合成でノイズを減らし、暗所ではスローシャッターでISO感度を抑えてノイズを抑えるモード。三脚などの利用は必須。DR補正は「1段ISO感度を上げて1段アンダーで撮ることでハイライト部を1段分広くする」機能で明暗差が大きい昼間では必須(Z1ならISO感度が1段くらい上がっても画質に問題ないし)、「HDR合成」は露出を変えて複数枚撮影して合成する機能だ。極端な明暗差のシーンでいい。

HDRならではの超ダイナミックレンジが広い写真に。屋内と屋外の両方をいっぺんに抑えたいときに良い
夜の津の守弁財天。三脚を立ててノイズ低減モードで
シャッタースピード1.3秒と超スローシャッターでノイズのないきれいな夜の写真を

 さらに絞り優先(今回、絞りが搭載され、F2.1から5.6までで選べる)、シャッター優先、ISO優先(センサーサイズが上がったことで最高でISO6400)、マニュアルと選ぶことができる。

 高感度時の画質も良くなったので、以前のTHETAより気楽に暗所での撮影も楽しめる。

撮影モードは5種類

 全体にちょっとアンダー目になりがちなので、必要に応じてちょっとプラスの補正をかけてやるといいだろう。

 THETAは非常にコンパクトなので、狭い場所での撮影も得意。内部のジャイロセンサーでちゃんと上下を補正してくれるので、自撮り棒や一脚につけて狭いところに差し込んで撮影してもいい。そういう細さを生かしたTHETAでしか撮れない全天球シーンというのも要注目だ(全天球画像はこちら)。

仕事にも使えるTHETAがやっと出た

 従来のTHETAは誰でも手軽に全天球画像を撮れるのが画期的だったけど、仕事で使おうと思うと、あるいは何らかのコンテンツ素材として使おうと思うと、もうちょっとクオリティが欲しいよね、ってことが多かった。

 でも、クオリティ重視でプロ向けの360度カメラとなると、30万円コースになる。例えば「Insta 360 Pro」だと37万円。仕事でVR映像を作成する人でもないとそうそう手を出せない価格だ。

 今までは5万円以下で買えるけどクオリティはそこそこのカメラと、ハイクオリティだけどちょいとデカくて30万円コースのプロ向けカメラしかなかったのである。

 THETA Z1はそこを見事に埋めてくれそうだ。THETAならではの機動力で高画質な全天球画像を撮れる。

 これは素晴らしい。価格はTHETA Vの約2倍になったけど、センサーサイズが1型になったことを思えばそう高価ともいえますまい。それ以上にクオリティの差は大きい。

 残念なのは、バッテリーの持ちが少々短いことと動画機能の強化が図られなかったことか。4K動画は撮れるが本格的なVR動画を撮るにはちょっと弱い。そこは「まずは高画質な全天球写真」を撮ることを目指した製品と考えたい。

 全天球画像の面白さや全天球画像ならではの表現を気軽に楽しむならTHETA V、より本格的に「使える画質」で撮りたいと思ったらTHETA Z1という感じだ。少なくとも、このサイズでこのクオリティを実現した全天球カメラはTHETA Z1だけである。

 360度すべてを記録して残したいシーンで、あるいは360度分の画像を利用した作品を作りたい時に、あるいは単に全天球画像が趣味なパノラマ好きに、イチオシである。

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