介護分野で役立つIT製品を開発するベンチャー企業のオムツテックは9月3日、被介護者のおむつに設置して排せつの有無を検知できるフィルム状の通信機「次世代オムツセンサー」を発表した。介護職員の排せつ介助をサポートする狙いなどがあり、2020年度中の商品化を目指す。
次世代オムツセンサーは、電子回路が印刷されたオブラートに、小型のICチップを貼り付けた構造。電子回路の印刷技術「プリンテッドエレクトロニクス」によって、オブラートの表面に銀インクで回路を印刷している。センサーは、水にぬれると溶けて壊れる仕様になっている。ベッドに受信機を設置し、組み合わせて使用する。
同センサーを被介護者のおむつに敷くと、排せつがある前は、ベッドに設置した受信機と非接触通信を行い、介護施設の管理室やナースステーションに信号を送る。排せつすると溶けて壊れ、信号が遮断されるため、被介護者が排せつしたことが分かる仕組みだ。
オムツテックの斎藤こずえ取締役は同日、早稲田大学で開催された「第37回日本ロボット学会学術講演会」に登壇し、次世代オムツセンサーを開発した経緯を説明した。
斎藤取締役によると、現在の介護施設では、介護職員が被介護者全員のおむつを2〜3時間おきに確認して回るのが一般的。ただ、この作業は介護職員の負担になる他、頻繁な見回りが被介護者の眠りの妨げになるため、双方によくない影響を及ぼしているという。
おむつに設置して排せつを検知するセンサーは過去にもあったが、汚れるたびに洗って再利用するものが多く、衛生面や職員の精神的負担の面で課題があったという。使い捨てタイプも存在するが、1回当たり500円程度のランニングコストがかかるため、継続的な利用が難しかったとしている。
この点について、次世代オムツセンサーを導入すると排せつしたタイミングが分かるため、見回りの回数を減らせるという。ベッドに設置する受信機のみ初期費用がかかるが、同センサーは1枚あたり数円から数十円で生産できるため、ランニングコストも抑えられるとしている。
斎藤取締役は、こうした工夫によって「少子高齢化に伴う、介護業界の人手不足に対応したい」と語った。今後は量産化のための技術を確立し、20年度中の商品化を目指す。
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