自動車自体がさまざまな技術の結晶であるように、自動運転も、各種の先端技術が結集して実現されている。そのいくつかを、把握する・判断する・支援するという3つのキーワードで考えてみよう。
自動運転を実現するには、まず車体の周辺環境などの状況を把握する必要がある。これには、空間内においてクルマがどこに位置しているか、車体自体に問題はないか、車内にいるドライバーや乗客の状態はどうなっているかなどの情報も含まれる。これらを把握するため、自動運転車ではさまざまなセンシング技術が活用されている。
一般的なセンシングの進化を考えた場合、そこには3つの方向性が存在する。それはセンサーの小型化と低価格化、新しいセンサーの登場、そして既存センサーから得られるデータを分析することで新たな情報を得るセンシングの高度化だ。これらの進化は、自動運転の実現にも大いに貢献している。
周辺環境のデータを集める技術として注目されているものの一つが、レーザー光を使ったセンサーの一種である「LiDAR」(Light Detection and Ranging もしくは Laser Imaging Detection and Ranging)だ。
レーザー光を周囲に放ち、それが何かに当たって跳ね返ってくるまでの時間を測ることで、物体の存在とその距離を把握する。この技術自体は以前から存在し、測量などに使われてきた。今はセンサーの小型化・軽量化が進んでおり、ドローンに搭載できるサイズのものも登場している。
ただ、LiDARは高価なため、カメラとAIを活用した画像認識技術を組み合わせて比較的低コストで物理空間を把握させる取り組みも行われている。米Teslaのイーロン・マスク氏もLiDAR不要論者の一人。同社の電気自動車(EV)は高性能なAIチップを搭載しており、車載カメラを分析して得た情報を参考に、周辺環境を認識している。
一方で、本連載の第7回で解説したように、画像認識を逆手に取って「AIをだます」ことを試みる研究もある。LiDARか画像認識か、はたまた別のセンサーかという話ではなく、可能な限り複数の情報源からデータを取得し、総合的に周辺環境を把握することが主流になると考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR