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自動運転はいつ普及する? いま実現している技術と課題を整理するよくわかる人工知能の基礎知識(2/6 ページ)

» 2019年10月23日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 近年、眠気や不注意による追突事故や、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる急発進・衝突事故などを防ぐために、多くの車両に衝突回避システムが装備されるようになった。

 例えば本田技研工業(ホンダ)の「衝突軽減ブレーキ」(CMBS)では、ミリ波レーダーとカメラで前方の車両や歩行者を検知し、衝突の恐れが高まった場合には自動でブレーキがかかる。これも自動運転技術の一つといえるが、ドライバーが運転に全く関与しなくていいわけではない。

 自動運転の定義については、さまざまな公的機関や研究機関がまとめている。例えば、内閣のIT総合戦略本部が毎年改定している「官民ITS構想・ロードマップ」には、JASO(日本自動車技術会)の「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」が採用されている。

運転自動化レベルの定義の概要「官民ITS構想・ロードマップ2019」より

 この定義では、自動化のレベルを5段階(自動化なしも含めれば6段階)に分けている。この5段階は、「操縦の主体」(注1)が誰かによって2つに大別できる。レベル2までは、操縦の主体は人間の運転者が担うとされている。自動化技術はあくまで運転を補助するだけで、衝突回避システムのように限定的な領域で機能する。

 レベル3以降は操縦の主体をシステムが担う。レベル3のように、何らかの問題が生じた場合に人間が操縦を引き継ぐ場合があるものの、基本的にはシステム主体で運転する。私たちが自動運転車に抱くイメージに近いものだろう。

注1:操縦とは、認知、予測、判断及び操作をすることとされている

 研究者や技術者はレベル5の自動運転の実現・実用化を目指しているが、現在市販車として私たちが一般的に利用できるレベルは2にとどまっている。

 例えば歌手の矢沢永吉さんがハンドルから手を放すCMでおなじみの、日産自動車の「ProPILOT」技術は、この秋に「ProPILOT 2.0」にバージョンアップされ、新型スカイラインに搭載されることになっている。この技術では、一定条件下で「手放し運転」が可能で、同一車線内の自動走行や車線変更などをしてくれる。

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 ただしこれもレベル2の範囲なので、完全にシステムに運転を任せられるわけではない。ProPILOT2.0では、車内に搭載したカメラがドライバーの様子をチェックしており、よそ見や居眠りなどを検知した場合、警告する他、自動的に減速・停車も行う。それだけでもドライバーにとって大きな負担軽減になるが、「自動運転の達成度」という観点で見た場合、まだレベル2が最新車種に搭載される程度というのが現状だ。

 官民ITS構想・ロードマップ2019では、高速道路でのレベル3自動運転を20年に実現することを目指している。レベル4が実現されるのは25年になる見通しだ。こうした自動運転の実用化に向け、各地で取り組みが進められており、18年度以降だけでも、日本国内のおよそ30の地域で自動運転の実証実験が行われている。

官民ITS構想・ロードマップ2019の主な改定項目「官民ITS構想・ロードマップ2019」より

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