東芝が、多国間通貨の高速取引に特化したFPGAマシンと、東証一部の約2000銘柄中500銘柄でTOPIXの値動きに追従するクラウド実装のPoC(概念実証)モデルを「金融国際情報技術展」(10月24〜25日、東京国際フォーラム)で公開した。会場では金融関係者や、外資系IT企業でFPGA部門に携わる人らの注目を集めた。
マシンに搭載されている東芝の「シミュレーテッド分岐アルゴリズム」(SB)は、「組み合わせ最適化問題」の近似解を高速に計算できるアルゴリズムの一つ。東芝が開発する「量子分岐マシン」という量子コンピュータの理論から生まれた、従来のコンピュータで計算できるアルゴリズムだ。
論理回路を組み替えられる専用計算機のFPGAに搭載したところ、組み合わせ最適化計算に適した「量子アニーラ」や、同計算でそれまで最速だったNTTなどの「コヒーレント・イジングマシン」を上回ったとして話題になった。
(関連記事:「量子理論の副産物に過ぎなかった」──東芝の「量子コンピュータより速いアルゴリズム」誕生秘話)
東芝は、為替取引に合わせたSBをFPGA上に搭載。8つの通貨間の15ペアから、最も利益率の高い取引を刻一刻と変わる市況の変化から30マイクロ秒ではじき出せるという。
東芝の辰村光介主任研究員は、「30マイクロ秒というのは、計算時間だけでなく、市況パケットが入ってきてから取引注文のパケットを返すまでのスループットにかかる時間」だとして、実用性の高さをアピールする。
「CPUでは考えず、FPGAに入ってきたパケットをそのままFPGAで計算して出力している。この一瞬の様子を、われわれは比喩的に『インテリジェント脊髄反射』と呼んでいる」(辰村主任)
このマシンは、高頻度に指値注文を出すことで市場に流動性を提供する代わりに対価を得る「マーケットメイク戦略」や、通貨ペア間の価格差の偏りを見つけて売買し利益を得る「裁定取引」(アービトラージ)を行うような、機関投資家や金融機関のトレーダー向けのプロダクトだという。
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