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» 2019年12月20日 07時00分 公開

英量子ベンチャーが日本進出 量子暗号デバイスやプログラミング基盤を展開

英量子ベンチャーCambridge Quantum Computingが日本市場に本格参入する。量子暗号デバイスの販売や、複数社の量子コンピュータで実行できるプログラミングプラットフォームを展開することで、パートナー企業と共同研究を進めたい考え。

[井上輝一,ITmedia]

 英ケンブリッジ大学発の量子ベンチャー企業、Cambridge Quantum Computing(以下、CQC)は12月19日(日本時間)、日本市場に本格参入すると発表した。同社の日本法人を通じ、量子暗号デバイスの販売や、複数社の量子コンピュータで実行できるプログラミングプラットフォームを展開することで、パートナー企業と共同研究を進めたい考え。

CQCが開発したデバイス「IronBridge」 レーザー光から4量子ビットを生み出して暗号に活用する

 CQCは、英ケンブリッジ大学のアクセラレーションプログラムで2014年に設立された量子ベンチャー。ケンブリッジ大学出身の研究者を中心に約80人の従業員を抱える。日本からは化学メーカーのJSR(東京都港区)が出資している。

 主に量子アルゴリズムなど量子関連のソフトウェアを開発しているが、19年3月には量子を組み入れた暗号関連のハードウェア「IronBridge」を発表し、実証実験を進めている。

CQC日本法人の結解秀哉社長

 日本に本格参入するのは、「量子技術に関心のある企業が多く、基礎技術のR&Dにも世界トップレベルで投資をしてきているから」とCQC日本法人の結解秀哉社長は話す。

 「ベンチャーとして、日本企業とコラボレーションしていくことはビジネスチャンスだと感じている」(結解社長)

 CQCが日本で注力するのは、(1)IronBridgeの販売・共同研究、(2)量子化学アプリケーションの展開、(3)量子機械学習の展開──の三本柱。

 IronBridgeはレーザー光で4量子ビットを生成・操作できるデバイス。量子の性質を用いた乱数生成で量子コンピュータでも解読が難しい「耐量子コンピュータ暗号」を生成できる。量子ビットに光を採用しているため、極低温に冷やす必要がある「超電導量子ビット」とは違い、室温で動作する。冷凍機が不要なため、マシンのサイズはサーバラックに収められる程度だ。金融機関など、セキュリティが重要となる企業への販売を見込む。

 量子化学や量子機械学習を実行できる環境として、CQCは「t|ket>」(ティケット)というプラットフォームを用意している。ティケットはPythonなどのプログラミング言語で量子コンピュータ向けプログラムを記述できる環境で、米GoogleやIBM、Microsoft、Intel、IonQ、Honeywellといった各社が開発する量子コンピュータ向けにコードを自動的にコンパイルできる。

量子プログラミング環境「t|ket>」(ティケット)の概要
デニース・ラフナーCBO

 CQCのデニース・ラフナーCBO(最高事業責任者)は、「各社の回路に最適化できることや、回路チップ上の量子ビットのパフォーマンスを見て高速な量子ビットを選べるのが、競合プラットフォームに対するティケットの強みだ」と語った。


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