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「あれがドコモショップのリアル」──“クソ野郎”事件はなぜ起きたのか 現役店員が漏らした本音(2/2 ページ)

» 2020年01月14日 19時15分 公開
[井上輝一ITmedia]
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2018年にある併売店が案内していた「本体(iPhone 8 64GBモデル)一括0円+2万6000円還元」という案件 コンテンツと指定プラン加入が条件 さらに条件を満たすことで1万円の増額が可能としていた

 ショップとしては、指標をクリアすればドコモからインセンティブをもらえる。このインセンティブの一部を客に渡すことで契約数を獲得していたのを、総務省が「不当廉売」として2014年ごろから問題視し始めた。

 キャッシュバックの全盛期には、「MNP一括0円10万円CB」など、他社からMNPで契約を移行してくると端末代金を無料(実質ではなく、本当に無料)にした上、2〜3カ月後に10万円を客の口座に振り込むというような“案件”が全国で出回っていた。こうした案件はMNPの他にもオプションや外部コンテンツ、見守りケータイやフォトフレームなどを同時に契約することを条件にしていることがあり、ショップ側としては1人の顧客を取るだけで複数の指標の数字を作れた(逆に、そうした抱き合わせがないものは客側から“良案件”と呼ばれていた)。

 一方で、客の中には解約のタイミングを見極めることで解約料を抑え、次々にMNPを繰り返すことでキャッシュバックを利益とする「買い回り」と呼ばれるユーザーも現れた。キャリアを渡り歩くユーザーに金が多く渡り、契約中のキャリアから動かないユーザーは高い料金を払わされている──という状況だった。

野村総合研究所の北俊一氏が2014年の総務省WGに提出した「高額MNPキャッシュバックのからくり」図

 この状況を総務省は問題視。こうして同省主導の下、キャッシュバックは段階的に規制され、19年にはプラン加入による端末割引を禁止した「分離プラン」を各社が導入するに至った。

規制先行でショップが苦しい状況に

 総務省の規制により、買い回りユーザーへの“不当”な金の流れはせき止められたが、ショップには契約数獲得のノルマが残った。販売手段を失ったのに、目標だけが残っている状況だ。

 では値引き以外の努力をすればいいではないかとも思うが、それも難しい状況らしい。

 「今となっては、自店舗の努力による値引きはおろか、POPを作るといったことすらほとんど認められていない。ただ言われたことをこなすだけ。毎日がつまらない」とA氏はこぼす。

 規制の波は、各キャリアの契約を取り扱う「携帯電話ショップ(併売店)」にも及んでおり、19年は分離プラン導入に前後して併売店の閉店が相次いだ。ある併売店の店長は「(19年の)6月からはもうずっと冬の時代だ」と取材に答えた。

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