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AIで作った漫画に“手塚治虫らしさ”は宿るのか? 前代未聞のプロジェクト、ピンチ救った「転移学習」(4/4 ページ)

» 2020年02月27日 10時45分 公開
[村上万純ITmedia]
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転移学習がブレークスルーに
生成画像のクオリティーが上がった

 「実は、漫画・アニメ画像の学習済みモデルを使った転移学習も並行して試していて、そちらのほうがクオリティーの高い画像を生成できたんです。しかし、手塚治虫さんが生前、人の顔を見て絵を描いていたことなどもあり、手塚眞さんは品質が悪くてもこちら(実写画像学習済みモデルの転移学習)が良いと。技術者的な発想なら、高品質な画像を選びますよね。そのときにコンテンツ制作者の思想に触れられた気がしました」(国松さん)

 AIが生成した顔画像を基に、手塚プロダクションの作画チームが全身イラストやネームなどを制作。コマ割やせりふなども担当し、漫画を完成させた。本当はコマ割やせりふ、全身イラストの作成などもAIに任せたかったが、時間の問題でかなわなかった。「5年あれば、もう少し細かなシナリオ制作などもできていたかもしれません」と松原副理事長は話す。

AIの画像を基に、漫画家がイラストを仕上げた

 「AIはいずれ、漫画家の発想や作画を支援してくれるようになると思います。漫画制作の全てをAIで担うのは難しいですが、背景を描いてくれたりなどアシスタント代わりにはなってくれるでしょう」(松原副理事長)

 栗原教授も「今回のプロジェクトが、AIと人間の共生を考える上での成功例になればうれしいです」と前向きだ。モーニングの三浦編集長は、栗原教授の話を聞いてプロジェクトへの協力を決めたという。

 「栗原さんは、AIによる漫画制作を研究すると、(AIにはできないことが多く)人間はすごいと思うばかりだと言いました。これは、アトムを作った天馬博士の『ロボットは人間のようには成長しない』という苦悩に似ています。手塚治虫さんが生きていたらこの試みを面白がるんじゃないかと思いましたし、世界に誇る日本の漫画も進化していかないといけません」(三浦編集長)

 プロジェクトチームは現在、ぱいどんの後編も制作している。

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