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AI導入の秘訣に「ID野球」あり 名監督に学ぶAIマネージャーの理想像マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(2/5 ページ)

» 2020年03月25日 07時00分 公開

 ご存じない方向けに説明すると、野村監督は現役時代に南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)で活躍し、野球界初の選手兼監督になりました。

 当時、努力と根性、勘と経験が常識だった野球界に、データを駆使した戦略的な思想を取り入れたのが野村監督です。引退後は解説者として豊富な知識や分析眼でファンをうならせ、監督としてヤクルトスワローズ(現・東京ヤクルトスワローズ)、阪神タイガース、シダックス、東北楽天ゴールデンイーグルスを指揮しました。ヤクルト監督時代は「ID野球」を掲げて、古田敦也選手などの育成を手掛けて球団を日本一に導いています。

 ライバルは現役時代にも比較された長嶋茂雄監督(当時)が率いる読売ジャイアンツであり、その独特なセンスと采配はID野球との対比で「カンピューター」と呼ばれました。

 豊富な資金力で他球団から有力選手を集めるジャイアンツに対して、ヤクルトは人材育成とID野球で勝利したのです。野村監督の野球界への貢献は計り知れないものがあり、決して「いつもぼやいてるおじいちゃん」ではありません。

 この図式は企業が抱える「属人化」「勘と経験」の課題解決でもあり、優秀なエンジニアを資金力で囲い込むGAFAはかつてのジャイアンツと重なります。野村監督が戦った状況は、企業でも変わらないのです。

AIマネージャーの理想像は野村監督

 企業のAI活用と人材育成を担うAIマネージャーは、どのような職務をこなすべきでしょうか。野村監督の業績を振り返りながら、まとめてみます。

まずはデータを集める

 野村監督は南海ホークス(当時)で捕手として活躍したのち、選手兼監督となりました。ここで行ったのは、あらゆるデータを集めることです。捕手は打者の癖や苦手なコースを把握して、投手への配球を指示するポジションです。もともとスコアを基にした分析は行っていましたが、それをさらに推し進めていきます。このようなデータを重視する戦術は、ドン・ブレイザーヘッドコーチの進言でもあり、アドバイザーの重要性も学べます。

 次に野村監督は、必要なデータがすぐに出てくるようにしました。1打者1球ごとに意思決定が求められるため、監督を補佐するコーチに必要なデータを提示するよう求めます。そのため野球では裏方とされるスコアラー(記録係)を重用したのです。

 企業がまず取り組むべきことは、自社が持つデータを把握することです。業務において多種多様なデータがありますが、これが整備されていないことが多々あります。

 「データがどこにあるか分からない」「正確性が怪しい」「取得するまで時間がかかる」などの問題があれば、AI活用は大幅に遅れます。専門家の力を借りるなどして、社内外のデータを把握することが大切です。

 企業でもデータベース担当者は裏方扱いであり、データを扱える環境は整備されていて当たり前とされがちですが、きちんとスポットを当てて予算と環境を整備しましょう。

 データがなければAIは開発できませんし、データを可視化しなければどこにAIを使うべきかも判断できません。まずは勘と経験から脱却する足掛かりとして、データを整備しましょう。

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