両店舗を立ち上げたのは、本業は別にあるというAさんだ。Aさんは新型コロナの影響で稼ぎが落ち込み、別の収入を得る手段を考えていたところ、ふと「お店の営業自粛で困っている女の子とお客さんをネットでマッチングすればいけるかも」とひらめいた。
そこで4月頭、準備もできていない状態で「Zoomでキャバクラをやります」と見切り発車でツイートすると大きな話題に。「著名人にリツイートされて広がり、まだ開店準備もできていないのに、仕事を失った女の子たちから『働きたい』との連絡がどんどん届き始めました」とAさんは振り返る。
それから店舗サイトの立ち上げを外部に発注し、投稿から1週間後にサービスをスタート。その後も「働きたい」という女性からの応募は絶えず、4月頭から5月末までの応募総数は500人超に上るという。
中には地方からの応募もあり、Aさんはリモート面接で採用を進めている。5月末現在、ズムキャバには東京だけでなく、中州やすすきのなど日本全国から集めた女の子が所属。一方、系列店のラグジュアリーは歌舞伎町、六本木、銀座の高級店経験者のみが所属している。
入店する女の子の事情はさまざまだ。Mayuさんは今年4月までは銀座のキャバクラで働いていたが、営業を自粛したため働き続けるのが難しくなったという。休業中の給料や補償金は「支給されていないんです」と話す。
楓さんは勤めていた実店舗が閉店し、ズムキャバ入りを決めた。「新型コロナの影響でオープン時から所属していたお店の閉店が決まりました。お給料もゼロになりましたし、メンタル的にやばかった(辛かった)」という。
Aさんによると、ズムキャバのスタート当初は若いIT系ビジネスマンの客が多かったが、リピート率は低かったという。最近ではキャバクラ好きな中年男性客が増え、すっかり定着しているそうだ。
「最近は“ガチ勢”のおじさんが増えてリピーターになっています。彼らはITに疎いので『Zoomとは何か』から教えることもあり、キャバクラなのにパソコン教室のようになる時も。でも、そういう人たちの方がお金を使ってくれます」
中には、客と店員が全国に散らばっているズムキャバならではの使われ方も。「東京の客が、方言目当てで地方の女の子と話すこともあります。地方の企業の社長などは、普段は会えない、東京の人気店にいた子を指名します。アメリカ、シンガポール、タイ、ブラジル、ノルウェーなどに赴任中の日本人客も利用しています」とAさんは話す。
わずかに女性客も訪れるという。同性の話し相手が欲しい人や、ズムキャバで働きたくて情報が欲しい同業者などで、楓さんは彼女たちの相談に乗ったこともある。
人気が出るキャバ嬢も実店舗とは違う傾向があるようだ。「実店舗だとケバくてセクシーな子が人気ですが、リモートでは親近感や包容力がある子が人気。こういう状況で不安な気持ちがあり、心のよりどころを求めるお客さんが多いのでしょう」
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