さて、デザインにおけるGrasshopper活用は建築/土木業界に限定されているわけではなく、ジュエリーや服飾デザインでも活用が始まりつつある。
このデザイン志向は、ジェネレーティブデザイン(Generative design)と呼ばれ、Grasshopperを利用してジュエリーや服飾をデザインしている人々のコミュニティ、GJD3D(Generative Jewelry Design and Fashion Design 3D)には、2020年7月時点で既に5000人を超えるGrasshopperデザイナーが参加している。
このサイトでは、Grasshopperデザイナーたちが設計した美しい指輪、ベルト、レース模様などを鑑賞できる。筆者は未経験だが、3Dファイルは3Dプリンタでの印刷も可能なようだ。また、さまざまなチュートリアルビデオも用意されており、それを参考にデザインスキルを向上させることも可能だ。
最初のプログラミングは多少時間がかかるかもしれないが、一度Grasshopperプログラムを作ってしまえば、あとは入力パラメータを変えることで薔薇の数、花弁数や、花弁の角度、色などを調整して、多様なデザインに再利用できる。まさに、デザイン界におけるオブジェクト指向プログラミングである。
また、ニュージーランドの大学、Victoria University of WellingtonのAriya “Xuxu” Amoozegar-Montero氏とEdgar Rodriguez Ramirez氏は、「着け心地よいブラジャー・デザインのためのパラメトリック・モデリング」と題した研究論文を公開している。
Grasshopperの活用はこのようにさまざまな業界で進みつつある。再び、金田氏に話を聞こう。
金田氏 例えば、美しいジュエリーデザインを、強度を高めつつ最小のマテリアル量で実現することが、Grasshopperで可能になる未来が来ればいいですね。
古代ローマの建築家、ウィトルウィウスは「建築は、強さ、機能性、美しさのバランスが保たれるように造られるべきである」と言っています。Grasshopperには、そのような一見相反するように見える価値観を調和させる力があるのではないかと思っているのです。例えば、ジュエリーやその部品でもそれを実現できれば、貴重な鉱物資源をもっと大切にできるのではないでしょうか。
可愛くて綺麗で利用者も満足でき、かつ地球にも優しい。例えば、漫画のドレスや下着の描き込みなど、Grasshopperで描く未来が来るだろうし、既に来ているのかもしれない。人間がマシンとしてコキ使われるような労働は機械がやるようになり、他者への配慮、私たちを取り巻く環境について考えるなど、人間は人間にしかできない仕事に集中できるようになるだろう。
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