もう一つ、M1版MacとPS5/Xbox Series X世代のゲーム機には似ている点がある。
それは、「メインメモリはそこまで多くない」ということだ。
PS5のメインメモリは16GBである。PS4が8GB、PS3が256MB(その他にVRAMとして256MB)であったことを思うと、「1世代進んだにしてはメモリが増えていない」のに気付く。
PCの方もそこまでメモリ搭載量が増えていないから……ということはあるのだが、ヘビーなゲーマーやPCユーザーならば、32GB以上のメインメモリを搭載している人も珍しくない。なのに「これから10年近く使う機器」のメインメモリが16GBなのだ。少ないとは思わないだろうか?
M1版Macも同様だ。メインメモリが8GBもしくは16GBと聞いて「少ない!」と思った人はいたはず。MacBook Airならともかく、現行のIntel版MacBook Proのメインメモリは「最低16GB」だ。別にCPUの種類が違ったからといって、急激にメモリの使用量が減るものでもない。
だが、実際に使ってみると、当然ながら、M1版MacもPS5も、メインメモリが少ないという印象は持たない。
理由は「SSDが十分に高速化してきた」からだ。
M1版Mac搭載のSSDは、ベンチマークテストによれば、「読み込みが約2.4GB/Sec」「書き込みが約2GB/Sec」となっている。今のノート型PC/Macとしては速い方だ。もちろんメインメモリのアクセス速度には敵わないが、仮想記憶(ストレージの一部をメモリ代りに使う機能)として使っても速度の低下は一定の水準で収まる。OSがSSDに最適化されていれば、SSD活用の実効速度はさらに上がる。MacはAppleがOSからプロセッサまで一体設計しているので、最適化には有利だ。
PS5はさらに速い。搭載されているSSDは最大約5GB/Secなのだが、それ以上に、システムの最適化が徹底して行われた結果、このSSDをかなり「スペックに近い速度で」活用できるようになっている。結果としてPS5は、PS4(ハードディスクモデル)よりも読み込み速度が100倍速くなった。PS5専用ソフトでは、その差が明確に出る。ここまで速いと、「メインメモリの一部を書き換えながら処理をする」形でも間に合うので、巨大なメインメモリを用意する必要がなくなっている。
全く同じではないが、Xbox Series Xも似た機構を持っており、読み込みは前世代よりも速くなっている。
「SSDが基本になっている」ことを生かして、プロセッサから周辺機構の設計、OSまでを最適化すれば、メインメモリの量が少なくても体感速度は落ちない。これが、M1と最新のゲーム機に共通する特徴、といえる。
もちろん、PS5がやっていることとAppleがM1版Macでやったことは同じではないが、「利用者にとっての快適さを高めるためにはどうするか」という発想は似たところがあったのではないか。そして「多くの部分を自社設計する」という流れを経ると、結果的には似た部分が出てきたのではないか……と感じる。
だからといって、一般的なPCの価値がなくなるとは思わない。だがその強みは、ハイエンドかつ最新のパーツやメモリをコストをかけて搭載した場合に限られ、コストパフォーマンスを追求すると、少々苦しいところがある。
Macについては、これからハイエンドの世界をどうするのかが課題であり、ゲーム機については「高い費用をかけて作られる最新パーツを使ったゲーミングPCとの差別化をどうするのか」ということが課題である。特化したが故の良さの裏側をどうするかが課題であるところも、また、同じなのではないだろうか。
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