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AIがクマやイノシシ撃退 野生動物を音と光で追い払うシステム、開発のきっかけは?(1/3 ページ)

» 2020年12月23日 08時00分 公開
[吉村哲樹ITmedia]

 人里に現れたツキノワグマを、AI技術を駆使して追い払う──会津大学(福島県会津若松市)が11月25日に公開した動画には、開発した「野生動物検出システム」がツキノワグマを光と音で追い払う様子がはっきりと映し出されていた。

 野生動物検出システムは、会津大学の齋藤寛さん(上級准教授)を中心とした研究グループが3年前から研究開発を進めてきた。屋外に設置した装置にツキノワグマやイノシシが近づくとその存在を自動的に検知し、光と音を発して追い払う。同時にあらかじめ登録してある近隣住民のメールアドレス宛に、注意喚起のメールを送信する。

photo 野生動物検出システムの装置

 齋藤さんは長年デジタル回路の設計技術を研究しており、マイコン基板を使った研究や教育に力を入れている。その過程で培った基板設計のノウハウを、地域の身近な社会課題の解決に役立てる方法を以前から模索していたという。

 野生動物検出システムを開発した経緯について、齋藤さんに話を聞いた。

 「3年ほど前から会津若松市内の民家近くや通学路付近でツキノワグマが目撃されるようになった。イノシシが畑の作物を荒らす被害も相次いでいた。こうした話題について、AI研究を専門とする同僚の教員と話しているときに、AIを活用した画像認識とマイコン技術を組み合わせて野生動物を自動検出するシステムのアイデアを思い付いた」(齋藤さん)

 早速その教員と齋藤さん、同じくデジタル回路の設計を専門とするもう1人の教員を加えた3人で研究開発をスタート。1年目は研究とプロトタイプの開発に専念し、2年目からは完成したプロトタイプを猪苗代湖(福島県)近くの県立公園に設置して実証実験を行った。

 研究を始めて3年目の2020年には、研究の内容を聞きつけた福島県とともに、県の実証事業として県内6カ所に装置を設置し、より広範囲な実証実験を行った。冒頭で紹介した動画は、その最中に撮影したものだ。

 当初は齋藤さんらがほぼ手作りで装置を開発していたが、現在では会津大学発のAIベンチャー、FaBo(福島県会津若松市)の協力を得て装置を製作している。

 「将来の実用化を視野に入れた場合、システムを簡素化してコストを抑え、メンテナンス性を向上させる必要があった。こうした点については、私たちより民間企業の方がノウハウを持っていると考え、FaBoの協力を仰いだ」

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