日本の自作キーボードは海外のキーボードと比べてもさらにコンパクト志向が強く、数字行がないキーボードも多い。そのためどうしても上記のような質問や「数字行がないから止めておく」といった声が聞かれるが、数字行がないのにはきちんとした理由がある。
キーボードに手を置いてみると分かるが、数字行はホームポジションから遠すぎるため、手を移動させないとほとんどの人がこの位置のキーを押すことができない。
つまり数字を打つためだけに腕全体を動かさねばならない。指の移動に比べて腕の移動は誤差も大きく、結果的にタイプミスも多くなる。
それに対してレイヤー機能を持った自作キーボードでは、ホームポジションに手を構えたまま数字が入力できるため上記の問題を解消できる。たとえ数字行のある自作キーボードを使っていたとしても「実は必要なかった」と使わなくなってしまう人も見掛けるほどだ。
そうは言ってもいきなり数字行がないキーボードは不安だったり、仕事や授業の関係でどうしても必要だったりという場合もあるだろう。もちろん数字行がある自作キーボードもたくさんあるので、まずはそういったキットから始めて少しずつ自分に最適なサイズを見つけ出すこともできる。このような柔軟さも、自作キーボードのうれしさだろう。
もう少しマニアックな自作キーボードの魅力が打ち心地の追求だ(動画4分35秒〜)。自作キーボードではCherry MX互換スイッチを利用した設計が主流となっている。Cherry MX(の互換スイッチ)と聞くと「青軸とか茶軸ってやつでしょ?」という方が多いのではないかと思うが、ここ数年の自作キーボードの世界ではもはやその表現は若干不正確だ。
ここ数年は単なるCherry MXのクローンという枠を超えてさらに高品質で多種多様なスイッチが大量に発売されており、その種類は優に100を超える。その中には既存のCherry MXの押し心地にとらわれない新しい打鍵感のもの、静電容量無接点式の打鍵感の再現を目指したものや、圧倒的にすべりがよく滑らかな打鍵感を実現したものまで幅広くあり、ほんの1〜2年前と比較しても状況は激変している。
(関連記事:「青軸」「茶軸」だけじゃない 自作キーボードで多様な進化を遂げた「互換キースイッチ」たちとその先にある改造の“沼”)
コンピュータを扱う人にとって、キーボードは日々触る、そして長時間触るデバイスだ。そんなキーボードの打鍵感が気持ちいいと入力も楽しくなる、というのはキーボードの「文房具」としての非常にプリミティブなうれしさだ。
自作キーボード実践編と称し、自作キーボードの一通りにとどまらないうれしさについて紹介してきた。これらを通して少しでも「自作キーボードのある生活」がより具体的に感じられるようになったら幸いである。
昨今の状況から在宅ワーク・在宅講義も増え、自宅で長時間キーボードに触るという機会も増えているのではないだろうか。出かけづらい雰囲気が続く今、まとまったおうち時間を生かして在宅のおともとして自作キーボードを楽しんでみてはいかがだろうか。
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