−− 今回の土蜘蛛の芝居は、歌舞伎だと最後に屋台が崩れて、後ろから目を光らせた巨大大蜘蛛が出てきたりします。超歌舞伎は、今のところ、会場の制約もあって、そういうアナログの大仕掛けは行われていませんが、今後はそういうものも取り入れていかれるのですか?
横澤 やりたいですねえ。幕張メッセファーストでやるとできないんですけど、会場次第ではできると思いますし。夢ですね。舞台ファーストの小屋なら、スクリーンも何もかもバーンと割れて巨大なものが出てくるとか、やりたいですね。本水(ほんみず:本当の水を使って舞台上に滝や池を作る演出)とかもやりたいし。
でも、制約があったおかげで、そういう方向に逃がしてもらえなかったからこそ、立回りでのケレンであったり、頭を使った演出ができたということがあって、ノウハウができたとはいえると思います。
超歌舞伎の場合、大仕掛けはAR側で担ってくれている部分もあって、今回のミクさんのメデューサみたいに髪の毛が迫ってくる演出とかですね。技術面では、今回、悪役としてのミクさんをどう立たせるかというのがARでの大きな課題でした。本当は、会場を覆うくらいのメデューサ頭をリアルでも出したいくらいだったんですけど、それは叶わず、キャノン(テープなどの発射装置)で糸を出すことしかできなかったんですが、その分、ARが悪役の見せ所を作ってくれました。
今回、ミクさんに隈取りしてもらうというご法度に手を出したりもして、「ミクさんにどうやって隈取りさせるの?」という声は上がったんです。で、僕はスケッチを見せながら、「ベタに描くとカッコ悪いから、浮き出るハムナプトラみたいな感じで」とか言って(笑)。それはまあ、ちょっと難しいということで、顔だけでなく全体をモワモワさせることで、おどろおどろしい感じを出しました。
−− 「御伽草紙戀姿絵」は、超歌舞伎の新しいステージを見たような気がしました。
横澤 今回は、何といっても桜をやめたのが大きいですよね(笑)。内部では、桜があってこその超歌舞伎だろうという意見もあったのですが、9月の南座を意識したこともあり、僕が違うことをやりたかったんですよね。
上演時間が今までで最長で、しかも、切腹のシーンのような、テンポが停滞する演出も入れています。あのシーンは最後まで悩んだのですが、結果的に、あのタメが利いて、大詰めの盛り上がりにつながる、その緩急が絶妙でした。そこに、僕は、宗家(藤間勘十郎)と松岡さん、獅童さんと國矢さんの信頼を見たという気がしました。「大丈夫だよね」というメッセージを感じました。
今回、僕は初めて「お芝居」にしようと思ったんです。今までは物語よりも絵面のつながりを重視して、キレイキレイキレイカッコイイカッコイイでつながるヒーローショーでいいと思っていたんです。ストーリーは捨てて、最後の大団円の勢いで感動してもらおうのが、超歌舞伎の型だったんです。
でも、もう6年目だし、お客さんにも超歌舞伎の型が入っているだろうからこそ、それを自分たちで破りにいきたかったんです。ストーリーやメッセージがあり、「ロミオとシンデレラ」という世界観に寄せた物語を実現しようと考えたんです。それを松岡さんは、切腹のシーンで見せてくれました。桜切りも含めて、新しいものが作れたと思っています。
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