東芝は6月9日、原理的に破られることがないとされる次世代暗号技術「量子暗号通信」を使い、世界最長となる600km以上の通信に成功したと発表した。この記録は既存システムの通信距離の3倍から6倍に相当し、実験室での最新の実証でも約500kmが最長だったという。同社は2026年までに実用化を目指す。
量子暗号技術は、「光子」という微弱な光の量子性を利用することで盗聴を防げる一方、光ファイバーが温度変化や振動による影響を受けることから、長距離の通信が困難とされていた。
そこで、同社は2つの異なる波長の光を使って通信中の位相変動を抑制する「デュアルバンド安定化技術」を新たに開発。同社の量子暗号鍵配信プロトコルと組み合わせることで、通信距離を延ばすことに成功した。600kmの際の通信速度は1bit/秒で、従来の記録だった500kmの際の通信速度(0.1bit/秒)に比べても10倍速く、今回の技術で500kmの通信を行うと400倍の40bit/秒で通信できることが確認できたという。同技術の量子暗号通信への応用は世界初。
東芝は、量子暗号技術の市場規模が2035年に約200億ドル(日本円で約2.1兆円)に達すると見込んでいる。
米英の量子コンピュータ2社が経営統合 “現時点最高”の量子コンピュータと量子プログラミングプラットフォームが合体
「量子技術」産業応用 東芝、NTT、NEC、日立、富士通などが協議会設立 「技術で勝って産業で負ける」イメージ払拭へ
“盗聴不可”の量子暗号通信を人工衛星で実用化目指す 先行する中国に追いつけるか
量子暗号通信で電子カルテの送信とバックアップに成功 NECとNICTなどが実験
東芝、“絶対に破られない”「量子暗号通信」を事業化 技術に自信、世界シェア25%目指すCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR