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阿寒湖の巨大マリモ、成長の理由は「層になったバクテリア」

» 2021年06月29日 15時36分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 北海道阿寒湖では「巨大なマリモ」が見られる。他の湖では直径数センチ、成長しても30cmは超えないというが、阿寒湖のマリモは30cmを超える。なぜ阿寒湖でだけマリモが巨大化するのか。国立遺伝学研究所らが6月28日に発表した研究結果によると、そのカギは「層になったバクテリア」にあるという。

阿寒湖の巨大なマリモ

 通常のマリモは、直径10cmを超えると中心部に空洞ができ、壊れやすくなる。マリモの成長には、波によるマリモの回転も不可欠で、大きくなればなるほど波でマリモが壊れてしまう。他の地域で巨大なマリモが見られないのはこのためだ。

 研究チームは、マリモ内部に住むバクテリアの種類や分布に着目。阿寒湖ではマリモの大きさによって内部に生息するバクテリアの種類が異なっており、直径20cm以上のマリモの内部では、複数のバクテリアが表層から深層にかけて層状に分布していることが明らかになった。この層状の構造が、マリモの強度維持に役立っている可能性があると研究チームは考察している。

マリモ内で層状構造をとるバクテリア群

 層になったバクテリアの中でも、光合成によって二酸化炭素や窒素を固定(有機物へと変換)する「シアノバクテリア」類の働きに研究チームは注目。シアノバクテリアには、粘着性の物質を放出して「バイオフィルム」と呼ばれる“ぬめり”を作る働きがある。巨大マリモの内部には砂などを取り込んだ茶色い縞模様が見られ、これはマリモが転がりながら成長する中で、バイオフィルム層が湖底の砂を巻き込んで内部に取り込んだものという。

 巨大化したマリモが壊れても、その断片がバクテリアの層状構造を引継ぐため、再び巨大なマリモとして再生し、数を増やしていくことも可能であるという。

 今回の研究でマリモの再生サイクルの一端が明らかになった一方で、マリモの生息域は減少傾向にある。2021年は阿寒湖のマリモが天然記念物に指定されてからちょうど100年になるという。研究チームは、研究の成果をマリモの保護や生息域の回復につなげていくとしている。

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