この問題は、もちろん誹謗中傷する側が悪い。取り締まるならそっちが先なのだが、いたちごっこしている間にもどんどん選手が傷ついてしまう。
SNSのダイレクトメッセージは、こっちからフォローしているアカウントからしか受け付けない設定にすれば済む話ではあるのだが、「アスリートたるもの、公人であるからにはオープンでなければならない」という考えもあるかもしれない。
しかし昨今のSNSの状況からすると、そうした考えはもう危険である。筆者はインターネットユーザー協会の代表理事だが、会を発足して間もない2009年ごろは、代表理事たるもの多くの意見に耳を傾けるべきとして、フィルター機能を使わないポリシーだった。当時Twitterは新登場したツールであり、いろんなことが手探りであったからだ。
だが正直、フォロワー外からのダイレクトメッセージは、ろくなもんじゃないというか、知らんがな、という話しか来なかった。よって2013年ごろには震災関連で増えすぎたフォロワーを整理し、DMはフォロワーのみに設定した。どこの誰とも分からぬ人の妄言に付き合うよりも、自分の頭を守るほうが重要だ。
最近はブロック機能もためらいなく使うようになった。もはやSNSは、有限の参加メンバーのみで仲良く活動する「場」ではなく、ただの一般道になったのだ。アスリートは、少なくとも競技期間中はフィルターやブロック、ミュート機能をバンバン使うべきだと思う。
アスリートの年代からすれば、TwitterよりもInstagram利用のほうが多いだろう。Twitterに比べれば誹謗中傷の通報に対して比較的素早く対応するほうだと思う。Twitterもそうだが、DMだけでなくコメントにもフィルター機能があり、一定の効果は期待できる。こうした機能があるのに、実は知らないアスリートも多いのではないだろうか。
アスリートの心を守るためには、SNSのコントロール方法をレクチャーするという活動が有効かもしれない。やや他力本願ではあるが、著名YouTuberに協力してもらって、各SNSのフィルタリングやブロック、通報の仕方を動画で拡散してもらうのもいいかもしれない。テクノロジーで解決できる部分も大きいはずだ。
日本や海外関係なく、メダル有望と思われていた選手がメンタルを理由に棄権したり、予選敗退したりするのを見るのは辛い。昔の古き良きオリンピックにはもう戻らない。選手の心を守る方法について、ネットの有識者が知恵を絞っていく必要がある。
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