ITmedia NEWS >

VRイベント人気も収益厳しく“やりがい”頼み……有志イベントにみる「新しい稼ぎ方」とは(2/2 ページ)

» 2021年09月03日 08時00分 公開
[武者良太ITmedia]
前のページへ 1|2       

VRChatは課金システムなし 収益をどう上げるか

 高い人気を持つVRイベントがある一方で、収益を上げるなどビジネスとして成功させるのはまだまだ難しい。日本で多くのVRユーザーが集まるVRChatには、イベント参加費などを支払う課金システムが備わっていないからだ。企業協賛などが少ない小規模なVRイベントならなおさらだ。

 21年3月にVRChatで開催した「SXSW Online XR」では325ドル(約3万5000円)のチケットを公式サイトで販売。登録したユーザー名をVR会場でスタッフが目視で確認するという極めてアナログな手法を採っていたが、これは特例中の特例だろう。

 VR展示即売会に参加する3Dクリエイターは、アバターなどのデータを作品販売サイト「BOOTH」などで販売し、その利益を得られる。しかしワールドそのものを作成するクリエイターや、ライブやダンスで参加者を楽しませるパフォーマーが収益を得るには、自力で地道な営業活動をしてスポンサーを募る手間が必要だ。イベント運営そのものも、創作活動だけでなくさまざまな雑務を担当するスタッフの人件費がかかる。

 VRChatイベントは無料で参加できるものが大半だが、運営陣のやりがいで維持できているようにも見える。より多くの参加者を集め、大きなコミュニティーに育てたいと願ったとき、最低限の収益性がなければ持続性に陰りが見えてくるかもしれない。

参加費に頼らない、有志イベントの稼ぎ方

 収益や資金調達に取り組んだVRイベントの事例として紹介したいのが、有志が9月4〜12日にVRChatで開催するVR展示即売会「パラレルマーケット」だ。企業にパフォーマーのライブスポンサーとなってくれるよう働きかけ、PC周辺機器メーカーのPFUなど9社がスポンサーになった。

 イベントを応援するクラウドファンディングも実施し、9月2日までに約60万円を調達。個人・企業ブースの参加費だけではなく、多方面から運営資金と、クリエイターやパフォーマーに還元する報酬を確保した。

photophoto 3Dモデルを展示する個人ブース
photophoto パラレルマーケット内の様子

 企業への打診の仕方にも工夫がある。イベント内におけるPRメニューを提示するだけでなく、企業ごとに異なるKPIと予算に合わせて実現できることを提案した。例えばアバター販売を目的とした企業には、ブース出展の代わりに専用のイベントステージを用いた試着会を開催しよう、ワールド内にアバターペデスタル(試着が可能なディスプレイ)を複数設置しよう──といった具合だ。

 主催者のあおみ(@AomeeVR)さんらパラレルマーケットの関係者は、これまで数多くのVRイベントに関わってきた人たちだ。適切な提案とそれを実現する技術力があって、初開催のイベントながら多くのスポンサーを集めることに成功したと考えられる。

photo パラレルマーケット主催者のあおみ(@AomeeVR)さん

 VRChat上のVRイベントをリアルイベントと同等の、もしくはそれ以上の利益を作り出す存在へと育てるためには、VRChatの仕様への理解、VR空間におけるアピール方法の理解、そして参加者を巻き込んで全員でイベントを運営するという熱気が必要になるのだろう。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.