千葉大学などを中心とした国際研究チームは9月10日、宇宙の構造をシミュレーションした世界最大の「模擬宇宙」を作成したと発表した。「Uchuu」と名付けたこのデータは、全体で3PB(ペタバイト)のデータサイズになる。このうち、暗黒物質の構造形成情報に特化した100TBのシミュレーションデータを公開した。
宇宙の質量の約8割を暗黒物質が占めている。この暗黒物質が重力によって集まり、その場所に星や銀河などが形成し、現在の宇宙の構造が作られたと考えられている。銀河やブラックホールなどの天体が誕生した歴史を探るため、国立天文台のすばる望遠鏡などで天体の観測が日夜進められている。
しかし、観測結果から宇宙の構造形成の歴史を引き出すには、物理理論に基づく模擬宇宙との比較が必要になる。模擬宇宙を作るには、宇宙誕生から現在までに暗黒物質に働く重力をシミュレーションしなければならない。そこで研究チームでは、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイII」を使い、シミュレーションを行った。
アテルイIIの全4万200個のCPUコアを使い、暗黒物質を2.1兆体の粒子で表現。それらに働く重力を計算することで、暗黒物質が作り出す模擬宇宙の構造を描き出した。その結果Uchuuでは、一辺が96億光年の長さになり、銀河の100分の1以下の規模の「矮小銀河」から巨大銀河団までのスケールの構造形成や進化を追うことが可能という。
この研究をリードした千葉大学の石山智明准教授は「シミュレーションの中で進化する銀河を観察することで、銀河団やその中に存在する銀河団銀河の形成、進化のプロセスの理解への寄与が期待できる」とコメントした。
この研究成果は、英国の天文学雑誌「王立天文学会誌」2021年9月号に掲載された。
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