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急成長中のSansanに学ぶ、B2B SaaS開発組織の広げ方 3度の体制変更を経てたどり着いた答え(2/3 ページ)

» 2021年11月10日 08時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

最初は「KPIごとにチーム分け」に変更 しかし再び課題表出

 こういった課題感や、所属人数が80人程度まで増えたことを受け、Sansanでは18年2月に開発組織の編成を変更。組織全体で共通のビジョンを持てるようにするため、メンバーをKPIごとにチーム分けする、どんなプロジェクトを立ち上げるかはチーム全体で決めるといった仕組みを新たに採用した。

photo 18年2月からの組織構成のイメージ

 この変更によって、チーム間でKPIが共有できるようになり、メンバーが職種を問わず共通の目標に向かって業務を進められるようになった。

 しかし今度は各メンバーにどういうKPIを設定すれば、より良い機能や製品を作れるのかが難しくなった。

 「B2B SaaSにはステークホルダーが複数いるため、(KPIとなる)変数がさまざまにある。そんな中で、製品や機能をどのようにKPIと結び付けるのか、ここに非常に悩んだタイミングだった」

目標などの形式を統一、製品リリースが迅速に それでも浮かぶ課題

 KPI策定で生まれた新たな課題や、さらに100人規模まで増えた所属人数を受け、Sansanは19年3月に再び開発組織の体制を変更。新しい体制では、バックログ(ユーザーの要望などのうち、未着手の案件)のフォーマットなどを組織全体で統一した。

photo 19年3月からの組織構成のイメージ

 PdMが見積もりなどと一緒にバックログを責任者に提出するようにすることで、組織が抱える業務の優先度をマネジャーが整理しやすくし、これまでより迅速に製品や機能をリリースできるようにした。

 チーム分けは、バックログを基に立ち上げたプロジェクトに応じて、エンジニアやPdM、デザイナーからなるチームを都度編成して起用する形に変更。KPIはリリースする製品・機能の量や、NPS(機能や製品を、顧客に10段階で評価してもらった指標)に統一することで、組織全体が共通の目標を意識できるようにした。

 この変更により、顧客からの評判を集められる機能や製品を短期間で開発できるようになった。バックログの形式を統一したことで、営業部門とデータの共有をしやすくなり、上長への報告を円滑化できるといった利点もあった。

 しかし、これでも新たな課題が見えた。リリースする製品・機能の量をKPIに設定したことで、それぞれの企画がおろそかになることがあり、十分に顧客のリサーチがなされないまま世に出てしまうことがあった。

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