飛び込み営業でたまたま訪問したオフィスが、一般企業を装った暴力団事務所だったら――。いつも通り名刺を交換し、商談を進める中で「おかしい」と気付いてももう遅い。ゆすり・たかりの被害に遭ったり、商談を打ち切る過程でトラブルに巻き込まれたりと、さまざまなリスクが考えられる。
万が一取引契約を締結した後で、先方が何らかの事件を起こし、関係があったことが世間に知られた場合はもっと悲惨だ。他の取引先や関係者から「反社会的勢力と取引している企業」「コンプライアンス管理やモラルに問題がある企業」といった目で見られ、イメージダウンは避けられないだろう。
こんな事態を避けるために、クラウド型名刺管理サービス「Sansan」などを提供するSansanは、反社会的勢力のチェック機能(以下、反社チェック機能)を法人向けに開発中。2020年3月の実用化を予定している。
Sansanは、ユーザーがスキャナーかスマートフォンで名刺を読み取ると、氏名や連絡先、部署などのデータをクラウド上に自動で蓄積するサービス。社名・個人名で検索すると名刺情報を表示できる他、メッセージ機能なども備えている。
搭載予定の反社チェック機能は、ユーザーが名刺をスキャンした際に、リスクのある企業名・団体名が含まれていると、アラートを発して取引を未然に防ぐ仕組みを想定。検知できる反社会的勢力は、世界各国の暴力団、総会屋、詐欺集団など多岐にわたる。
同機能の開発を手掛ける、Sansan新規事業開発室の尾中倫宗氏は「かなり営業案件が進んだのに、取引先が与信・反社チェックに引っ掛かり、今までのプロセスが台無しになる例はよく聞きます。実は私も過去にありました。名刺を調べるだけで信用度が分かると、こうしたケースを防げると考えました」と開発の狙いを説明する。
尾中氏らのチームは、名刺管理サービスに付加価値の高い機能を搭載し、多様なシーンで役立つプラットフォームに進化させる役割を担っている。その中で、どの企業も他社と契約を結ぶ際にコンプライアンス担当者などが必ず行うものの、企業によって精度にばらつきがある反社チェックに着目。名刺との相性がよいことに気付いた。
「相手先の社名を検索するだけの企業から、高いコストをかけて調査員を雇う企業まで、各社の反社チェックの精度はさまざま。実施のタイミングも取引完了の直前が多く、チェックに引っ掛かった場合、商談にかけた時間や過程が無駄になってしまうのが現状です」と尾中氏は説明する。
「当社はこの課題に着目し、反社チェックの精度を高めつつ、名刺交換という取引の早い段階に持ってくることで、不審な企業に気付くスピードを速められるという結論に至りました。チェックが担当者の負担になっている場合もあるので、業務を効率化する狙いもあります」(尾中氏)
尾中氏らのチームは現在、反社チェック機能の精度を高めるべく、世界中のリスクある企業などを約440万件収録したデータベースを持つ金融データプロバイダー、英Refinitiv(リフィニティブ)と協業。同機能を共同開発している。
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