こうして鴻巣市は21年1月、5校のテスト校を対象にこれらの仕組みを先行導入。さまざまな検証・評価を行った上で、4月の新学期からGIGAスクール構想に基づく「生徒1人1台のPC配布」と同時に、小学校19校と中学校8校で新しい教育ICT基盤の運用を開始した。
これにより教員は学校の外にPCを持ち出し、自宅などの環境からクラウド上の校務システムを利用できるようになったため、業務効率が向上。生徒も普段授業で利用しているPCを持ち帰り、自宅のインターネット環境からSaaSの学習アプリに直接接続して勉強できるようになった。通信の品質も安定しているという。
教員がPCの使い分けをしなくてよくなったという効果もあった。他の教育委員会では情報漏えい対策のために、生徒の成績や出欠など個人情報を扱う際はインターネットと完全に分離した「校務系ネットワーク」を利用し、外部とのメールのやりとりなどインターネットを利用する際は別途「校務外部系ネットワーク」に接続するよう定めているところも多い。
この場合、校務系ネットワークと校務外部系ネットワークとで異なる端末を使い分けなければならないが、鴻巣市の新しい基盤では1台のPCでさまざまな業務をカバーできるよう仕組みを刷新した。他の自治体から赴任してきた教員の中からは「とても便利で仕事がはかどるようになった」などの声を聞くという。
「もともと『PCを文房具のように使いこなしてほしい』というビジョンを掲げていたが、こうして教員も生徒もPCを気軽に持ち歩いていろんな場所で業務や学習に活用している姿を見ると、当初のビジョン達成に向けて大きく前進できていると感じる」
クラウド活用により、教師・生徒ともに新しい業務や学習の形を手に入れた鴻巣市。新井さんは今後、データ利活用の促進など、クラウドのメリットをさらに追求していきたいと話す。
「あくまで個人的な展望だが、校務支援システムやMicrosoft Teams、Officeなどの利用データをそのままAzure上のデータウェアハウスやBIツールで集計・分析することで、高度なデータ利活用が比較的容易に実現できるのではと考えている。これ以外にも、今後さまざまな面でクラウドならではのメリットをさらに引き出していきたい」
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