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「決裁と会計のシステムが別々」で業務にムダ発生 縦割り設計に悩んだ三井不動産がクラウドでスッキリするまで(1/2 ページ)

» 2021年12月07日 12時49分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 業務の関連性が高いのに、縦割りシステムのせいで連携ができない──こんな悩みは多くの企業に付き物だ。三井不動産もそんな企業の一つで「総務部が所管する決裁システムと経理部が所管する会計システムが分断され、各事業部の利用者はこれらのシステムを別々に利用する必要があった」と、同社の山本将人さん(DX本部DX一部技術主事)は振り返る。

 業務によっては同じデータをシステムごとに2回入力しなければならないなど、多重入力が効率化の妨げになっていたという。

 しかし、2019年にこれを刷新。従来はオンプレミスだったところ、Azureや各種SaaSなどを活用してフルクラウド化し、決裁・会計システムの連携性を高めた結果、受発注や会計の業務量を35%削減できた他、働き方の改善にもつながった。

photo 旧システムと新システムの比較(出典:Gartner 2021年12月)

 分断されていたシステムの連携性を改善し、業務効率化を実現した三井不動産のクラウド移行はどのように実現したのか。ガートナー ジャパンのオンラインイベント「ガートナー IT IOCS コンファレンス」(12月1〜2日)で山本さんが解説した。

DX本部主導でプロジェクト発起 きっかけはハードウェア更改

 プロジェクトが始まったのは16年。きっかけはハードウェアの保守期限切れという。当初は機器の入れ替えも視野に入れていたものの、当時使っていたハードウェアがもともとは08年に導入し、12年に更改したものだったことから「今回はバージョンアップではなく、システムを入れ替えよう」と決定。山本さんが所属する部署「DX本部」を中心にプロジェクトが立ち上がった。

 クラウドの活用を決めたのは、もともと三井不動産が社内システムのクラウド化を進める方針だったためだ。すでに「Salesforce」「Sansan」といったSaaSの利用やその検討が始まっていた他、IaaSに移行するサーバも増えつつあったため、新システムもクラウドを活用することに決めた。

「使いやすいシステム」目指し総務・経理・DX本部が横断で協力

 プロジェクトの目的は主に2つ。一つは分断されていたシステムの連携性を上げ、業務を効率化することだ。いくらクラウドを導入し、システムを刷新しても、従来通り2つのシステムで連携が取れていないのでは意味がない。

 そのため今回のプロジェクトには総務や経理部以外にも、DX本部が参加。業務の切り分けや設計の判断に携わることで、社員にとって使いやすいシステムを目指したという。

 もう一つは紙の削減だ。旧システムは紙の利用が前提で、こちらも業務が煩雑化する一因になっていたため、刷新を機に改善したかったという。

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