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「アバターの画像ください」と言われてちょっと考えた(3/4 ページ)

» 2022年02月14日 16時20分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

自分を模しても「自然ではない」アバター

 アイデンティティーでありつつ「自然のままではない」というのが、アバターの本質だと筆者は考えている。

 以下の画像は、Appleの「ミー文字」での筆者のアバターだ。匿名のものではなく、通話やデモなどに使うことも多いので、自分に寄せた姿にしてある。筆者は帽子をかぶっていることが多いので、アバターにもかぶらせている。ここは「アイデンティティー」の部分だろう。

photo 筆者(西田)のミー文字。記事やビデオ通話などではこのアバターを使うことも多い。当然、ミー文字のテイストに合わせているので「自分だが、自分とは違う」

 ミー文字のテイストやカスタマイズ可能な部分から来る制約は大きいが、ただそれでも、どこかに「見栄え良く」している部分はある。おっさんの顔よりこちらの方がいいだろう……という気持ちはある。

 自分をネットサービスの中でそのまま見せる、いわゆる「実名」的な利用が求められるシーンであっても、われわれは既に「ちょっと見栄え良く」することを当たり前に受け入れている。

 考え方でいえば「ビデオ会議のバーチャル背景」もそうだ。自分自身はそのままだが、背景となる部屋などは、「自分が他人に見せたいもの」に入れ替えて使っていることになる。

 ビデオにしても、今は表示中にエフェクトを加えるのも難しくない。そもそもスマホの自撮りでは「盛る」人も少なくない。スマホのビデオ通話アプリには「美白」などのフィルターがつくのが当たり前になっているし、ソニーのVlog向けカメラである「ZV-E10」にも「美肌モード」がある。

photo ビデオ会議中の筆者。背景はバーチャルだし、顔にも多少「美肌」がかかっている。「自分と自分の部屋そのままではない」ともいえる

 極論すれば、ビデオ会議中に写っている自分は「自分の動画」である必要はない。自分の声としぐさを反映できるなら、3Dのキャラクターでもいい。スマホ1つでできることだ。将来的には、自分を3Dキャプチャーしたモデルを使う人も出てくるかもしれない。究極の「リアルアバター」であり、欧米ではそうした用途の研究も多い。

photo Metaが研究中の「リアルアバター」。映画やCG動画向けでなく、あくまでアバター向け。欧米ではこの方向性での研究も活発だ

 ただ、自分をそのまま3Dキャプチャーしたとしても、「まったく現実のままの自分」を使うかというと、そうではないように思う。

 現実で化粧で顔色や見え方を補正するように、リアルアバターも「自分がイケてると思う自分の顔」にして見せるのではないか。そうすれば、髭をそったり化粧をしたりしなくてもいい日が増えるかもしれない。

 リアルなアバターであっても、自分の姿は「見せたい姿」に他ならない。現実世界で着飾り、身なりを整えるのも同じ考え方だ。ただ、アバターの方が現実よりもっと「見せたい」方向に寄せやすくなっていくだろう。

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