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新車買ったらペイントプロテクションフィルムを ボディーコーティング、スマホの保護フィルムとはここが違う西川善司の「日産GT-Rとのシン・生活」(4/7 ページ)

» 2022年02月28日 08時00分 公開
[西川善司ITmedia]

 では、PPFとはどんなものなのか。

 その構造としては大まかには下図のような感じで、最下層から見ていくと、まずクルマのボディ面(塗装面)へ接着するための「粘着層」があり、その上にPPF本体ともいえる「樹脂フィルム層」、外気に触れる部分には見るものに光沢感を与える「ハードコート層」から成っている。

photo PPFの構造概略図。PPFメーカーの大手、JN-SHIELDのサイトより引用。厚みは粘着層、樹脂フィルム層、ハードコート層を合わせて約0.2mm程度

 PPFは、基本的には熱可塑性樹脂フィルムをボディーに貼り付けて塗装面を守るものになる。熱可塑性(ねつ・か・そせい)とは、加熱すると軟質化する……という意味になる。そう、上で触れた「お湯タオルで拭くと傷が消える」というPPFの特質は、この熱可塑性から来ている。

 なお、PPF製品を開発している著名メーカーとしてはXPELJN-SHIELDUNI-GLOBEFLEX SHIELDなどがあり、各社、その樹脂フィルム部分には各メーカーごとの独自レシピによるポリエステル系やポリウレタン系の素材を採用している。熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethane)といえば、軟質系のスマートフォンケースに用いられるTPU素材を連想することだろう。いうなればPPFはTPUの親戚というわけだ。

 気になる耐用年数だが、概ね、上級ガラスコーティング並み……具体的には3年から5年といったところになる。経年によって端からめくれて浮いてきてしまわないのか、心配する人も多いことだろう。ここは、20年以上のPPFの歴史の中で、各PPFメーカーが最も力を入れて進化させてきた改善ポイントで、接着の継続性は世代を重ねるごとに改善されている。

 一般的に樹脂フィルムは、紫外線に弱い性質があるが、これについても、各メーカー独自のレシピによる劣化対策に加え、PPF最上層のハードコート層の紫外線カット効力の向上によって、耐用年数も延びてきている。また、心配される陽光を受け続けたことによる樹脂材質特有の黄変現象(樹脂材質のものが紫外線を受けて黄色く変色する現象)も、そうした創意工夫によってかなり抑止できるようになった……と各メーカーは主張している。

PPFメーカーの大手XPELの最新PPF「XPEL ULTIMATE PLUS」の解説動画。実は筆者が今回選択したのもこちらのPPFである

 ただ、実際のところ、耐用年数については、車体の保存環境によって変わってくるようだ。天日干しの雨ざらし状態を続ければ、樹脂の劣化は加速するだろうし、貼り付けたエッジ部分からフィルムが剥がれてくることもあり得るだろう。逆に、屋根付きのガレージで保管されている車体は、それこそメーカーが想定した以上の長寿命となることがあるかもしれない。

 気になるPPFを適用したあとの車体の見え方(見栄え)はどうかというと、ハードコート層が事実上のクリア層の役割を果たすため、ほぼボディーコーティングのガラスコーティングを施工した状態と変わらない光沢感が得られる。なお、ハードコート層はいわゆるアクリル樹脂系の素材で出来ている。

 もう1つ、見栄えという意味では、貼り付けた樹脂フィルムのエッジ部分が「見え見え」で、「貼ってる」感満載にはならないか、という点を心配する人もいることだろう。

 この辺りについては、PPF施工職人の施工時の貼り付け技術……、特に輪郭処理の工夫のよしあしで変わってくる。スマートフォンの平坦な画面に保護フィルムを貼り付けるのとはわけが違うのだ。

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