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新車買ったらペイントプロテクションフィルムを ボディーコーティング、スマホの保護フィルムとはここが違う西川善司の「日産GT-Rとのシン・生活」(5/7 ページ)

» 2022年02月28日 08時00分 公開
[西川善司ITmedia]

 クルマの場合は、ボディー表面が立体的な造形にあふれており、1枚の平面フィルムを引き伸ばしながら貼るだけでは綺麗に収まらない状況が頻発する。つまり、適度なフィルムの分割(カッティング)を組み合わせて貼っていく必要があるのだ。

 しかし、ボディー面の平面箇所でフィルムをつなぎ合わせてしまえば、継ぎ目が露見しやすくなる。となると、フィルムの継ぎ目はボディー面の立体的なエッジ付近に合わせた方が目立たなくできる。しかし、エッジ付近にフィルムの末端が来てしまえば、そこから水や埃が入り込んでフィルムの劣化が加速し、剥がれやすくなってしまうかもしれない。この部分をうまく施工できれば、PPFメーカーの公称耐用年数を超えて効果を持続させることも可能になるかもしれない。

 そんなわけで、この辺りの「フィルムの継ぎ目を目立たなく美しく仕上げること」と「剥がれにくく施工し、耐用年数を最大化すること」については、PPFメーカーの素材改良よりは、施工職人の腕前の方が重要になってくることは容易に想像できるはずだ。

 さて、ここまでを読了した読者の中には「最近流行のカー・ラッピングのようなものだね」という感想を持った人も多いことだろう。

 ラッピングとは、クルマのボディーを再塗装することなく、任意の色や柄、材質(テクスチャ)感つきのフィルムをクルマのボディーに貼り込むことで、クルマの見栄えのコーディネートを楽しむ手法のこと。

photo 東京モーターショー2019のときに展示されていた黄金色の「フェラーリ458イタリア」。こちらは金色に塗装されているわけではなく、黄金メッキ調のフィルムをボディー面に貼り付けたラッピング仕様だ

 確かにPPFの施工技術は、ラッピングの施工技術に共通するところは多い。

 ただし、用いられるフィルム素材自体は全く異なっており、ラッピング用のフィルムには特段、耐衝撃性能は与えられていない。もちろん、実体フィルムが貼り付けてある分、元のボディーカラーの保護には貢献するが、飛び石なとが衝突した場合のクッション効果はPPFの方が圧倒的に上だ。というのも、PPF自身に強い弾性特性があることと、そもそもフィルム自体の厚みがラッピングフィルムより厚い……といった辺りが耐衝撃性能に貢献するからだ。

 また、PPFは基本的に透明フィルム製品が中心で、有彩色主体のラッピング用フィルムとは見栄えも大きく違っている。とはいえ、PPFとラッピングフィルムのクロスオーバーを望む声は大きいそうで、有色版PPFの開発は進行しつつある。実際、既に、黒などの無彩色系PPFは一部のメーカーからリリースが始まっている。

photo 黒のつや消しPPFは存在し、実際にこれを使った施工も普通に行われている。さまざまな有彩色版のPPFの登場も期待される

 ラッピングとの共通点も確かにある。

 例えば、PPFも、経年劣化した場合に、ラッピングと同様に剥がすことができる。万が一、PPFが何らかの影響で剥がれてきてしまった、汚れてしまった、あるいはお湯タオルで復元不能なほどにPPFがダメージを負ってしまった、といった場合は、PPFを剥がして改めて部分施工してもらうことは可能となっている。

 なお、事故などに遭遇し、PPFごと、ボディーを大きく損傷し、保険金を使って直すという場合は、PPF施工の証明書(施工工房の領収書等でもOK)があれば、ボディーの修復に留まらず、PPF施工までを、自動車保険でカバーできる。

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