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楽しいパリピライブからトラウマレベルの9.11体験まで 映画祭&音楽フェス「SXSW 2022」に見るVRコンテンツの最新系(3/3 ページ)

» 2022年03月30日 18時00分 公開
[武者良太ITmedia]
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強烈な体験談を視覚で追体験できる『Surviving 9/11 - 27 hours under the rubble』

photo アメリカ同時多発テロ事件が起きたあのとき、グラウンドゼロで生き延びた人物のストーリー。画像はSXSWスケジュールページより

 旅客機が衝突した瞬間、ワールドトレードセンターのビル内からの景色は瓦礫の雨に覆われるものでした。高解像3D写真(もしくはCG)&シネマグラフの説得力に圧倒される、平面ディスプレイとは没入感が圧倒的に異なるVRの特性を活かしたコンテンツ。アメリカ同時多発テロ事件の現場となったツインタワーで、どんな破壊の世界が広がったのかが痛いほど伝わってきます。

 他にもナチスがユダヤ人に対して行った絶滅政策ホロコーストを体験した人物の肉声をベースに、アニメーションで当時のシーンを再現した『Komez Alef O』もありました。トラウマとなるほどのショッキングなシーンを伝える上で、VRの技術は極めて効果的ですね。

平和を願うチャリティーDJイベント『United For Peace in Ukraine』

photo 開けたルーフトップに用意されたパリピな空間。リアルでは酔っ払ってハッピーになっている多くのアバターが集っていた。筆者撮影

 SXSWにコンテンツを提供したVRrOOmとDigital Rise、DJイベントも開催したバーチャルミュージシャンm1n0t0rを中心としたチームが、ウクライナの平和を願って開催したチャリティーDJイベント。

 日本から参加したバーチャルアクターチーム・カソウ舞踏団のメンバーと、海外のダンサーがEDMのリズムにのってダンスバトルを繰り広げていました。集められた寄付金は、国連難民高等弁務官事務所に送られました。

 しかしDJイベントもダンスバトルも、一昔前まではリアルな空間でなければ楽しめなかったもの。VRが普及することで、ライブエンターテインメントの可能性がより広がるものだと実感します。

VRから生まれる次世代のクリエイターを感じた展示会

photo SXSWのVR会場を一緒に巡った、日本のVR友だちとともに。筆者撮影

 1987年から街をあげての音楽フェスとして始まったSXSWは、時代の流れとともに映画祭、インタラクティブフェスとしての側面も持つようになりました。

 そして今回で2回目の開催となったSXSWのVR会場。現地で体験できるVR/ARコンテンツの一部が体験できるというものだったようですが、それでもVRを用いて新たな表現にチャレンジしていく各国のクリエイターやパフォーマーの存在を色濃く感じ取れるものでした。

 記事内でも触れていますが、ストーリーを追う映画的発想の海外のクリエイターと、ミュージックライブ表現を追求する日本のクリエイターの対比は実に興味深いもの。もちろん海外でもパーティクルを駆使した表現をしている方はいますし、日本にもストーリーを見せるクリエイターはいますが、SXSWという舞台で何を見せようと考えたその目線の違いは、今後のVRコンテンツを占うヒントとなりそうです。

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