過去の流れを踏襲すると、Web3.0で拡大していくメタバース市場でも、サービスがB2Bへと転換していく可能性が高いという。
「メタバース関連のビジネスが盛り上がるか懐疑的な見方もあるが、すでに具体的な兆候は確認できている。例えば、VRゴーグルは2025年にグローバルでの出荷台数が3000万台に達するとの予想がある。ハードウェアとしてのティッピング・ポイント(臨界点)を超え、一定の普及を見せることは間違いないと考えている」(頼さん)
実際「メタバース×B2B」の具体的な取り組みは、SaaS分野でもすでに始まっている。
例えばスマートフォンやPC、VR機器などからバーチャル空間に集える「cluster」は、法人向けのイベント会場制作や運営といったサービスの提供に力を入れている。
clusterがKDDIや渋谷区観光協会などによる三者共同プロジェクト「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」に提供したバーチャル空間には約40万人が参加したという。このように、VR空間は商用イベントとして成立しうることが伺える。
B2Bの文脈では、香港発のバーチャルイベントプラットフォーム企業、EventXも、B2Bの展示会やイベントをオンライン上のバーチャル空間で再現しており、すでに中国Alibabaなどにもサービスを提供している。
直近のシリーズBラウンド調達では、中国のベンチャーキャピタルであるヒルハウス キャピタル グループのGL Venturesなどから約20億円(1800万米ドル)の資金も調達している。
こうしたサービスのニーズは、特にコロナ下で業務のリモート移行が加速する中で顕在化してきた。例えば、ビデオ会議では伝えにくい製品やサービスの特徴も、バーチャル空間なら身振り手振りや3Dモデルを活用しながらプレゼンテーションできる。
バーチャル空間で潜在顧客とのタッチポイントを創出することで、どのブースに誰が訪れたかをCRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理ツール)に自動で蓄積することもできる。これはリアルな展示会で行われていた名刺交換を代替する、メタバース固有のユニークな機能といえる。
「バーチャル空間で生成した展示ブースはリアルと違って再利用できるため、中長期的に見ればコストダウンが可能。意思決定者である経営陣の立場からすれば、削減した分のコストをバーチャルコンテンツの作成に充てられることはリーズナブルに感じられるだろう」(頼さん)
このようにメタバース固有の体験や利便性によって生まれた新たな価値は、企業間の活用シーンでも進化を見せつつある。
まだまだ一部のエンターテインメントやコミュニケーション領域での活用にとどまるメタバース関連ビジネス。しかし、どんな要素が「B2B化するか」という観点で着目すると、SaaSに限らず次なるトレンド発見に役立つかもしれない。
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