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一眼レフの時代は終わったのか? 今になってミラーレス一眼に主力がシフトする理由荻窪圭のデジカメレビュープラス(3/5 ページ)

» 2022年08月21日 14時40分 公開
[荻窪圭ITmedia]

一眼レフの時代は終わったか

 続いて気になる「レンズ交換式カメラ」の現状だ。

 7月に流れたニュースでは、日本が世界に誇るシェアを持つカメラの世界で主力として長年君臨してきた一眼レフがとうとう終焉に向かってる……というネガティブな印象が醸し出されていて多くの人の反発を生んだ。

 プロが使うホンモノは一眼レフで、ミラーレス一眼はワンランク下、みたいなニュアンスを感じたのかもしれない。

 確かに、ミラーレス一眼の登場当初はエントリー向けだったのだけど、それは本質的な問題じゃない。

 なぜなら、一眼レフはレンズ交換式フィルムカメラに特化した構造であり、デジタル向きではなく、逆にミラーレス一眼はレンズ交換式デジタルカメラに特化した構造を持つからだ。

 ちょっとその構造を断面図で見てみたい。

「cp+」で撮影したニコン D4の断面図を加工したもの。黄色い矢印が光の動きで、撮影の瞬間はミラーが上に上がってイメージセンサーに光が直接当たるという仕組み

 まず、カメラ内に斜めにミラーを入れて光を上に反射させ、プリズムで方向を変えて、ファインダーから覗けるようにする。そうすることで実際に撮影に使うレンズでどう映すかを決められるし、ピントも合わせられる。

 そしてシャッターボタンを押すと、ミラーが瞬時に上がり、同時にシャッター幕が開いてフィルムに光があたり、撮影が終わるとまたミラーが元の位置に戻るという構造だ。

 AF機構が入るとちょいとややこしくなる。

 AF用のセンサーがミラーボックスの下に入り、ミラーに入る光の一部を下に反射させてAF用センサーに当て、距離を測っているのだ。

 フィルムの代わりにイメージセンサーを置いた構造なので、シャッターを押す寸前までの作業と、実際の撮影の2段階に分かれていると思っていい。フィルム時代と同様の機構を採用してるのである。

 でも、イメージセンサーはフィルムとは違い、撮影の瞬間以外でも映像を出力できるし、センサー面でピントを合わせることもできる。

 ミラーレスにすればフィルム時代に特化した機構をすべて無くすことができるのである。

 イメージセンサーに常時光を当ててやれば、そこに映った映像をいつでもファインダーやモニターで見ることができるから、凝ったミラーやペンタプリズムは不要になる。

 ホワイトバランスや露出補正といった撮影設定が「おおむね」反映された状態の、実際に撮影される写真に近い映像を見ながら撮れるので確実性は上がる。

 イメージセンサー自体にフォーカス情報の取得をさせればAFセンサーも不要になるし、実際に撮像する素子の面でフォーカシングを行うので正確さも増す。

 イメージセンサーの前にはシャッタースピードに合わせて開閉して一瞬だけ光を当てるためのシャッター幕があるのだが、電子シャッターを使えばそれ自体が不要になる。

 ミラーボックスもメカシャッターも無くなれば、撮影時の可動部が激減し、可動部が無くなればそれに起因する微細なブレもなくなるし、メカ部分が無くなれば連写速度もシャッタースピードももっと上げられ、デジタルカメラとしての性能が上がる。

 ある意味、一眼レフの呪縛から逃れられるのだ。

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