3つめはシャッター。
メカシャッターを使わず、イメージセンサーが持つ機能(電子シャッター)でのみ撮影すると、物理的な可動がなくなるため、シャッタースピードをぐっと上げられる。センサーの性能にもよるが、メカシャッターだと1/8000秒だが、電子シャッターでは1/32000秒まで上げられるという機種もある。
しかもシャッター幕やミラーといった物理的な動作がなくなるため、連写速度も上げられる。これはイメージセンサーからの出力の速さや後段の画像処理にも関わってくるけど、連写速度も上げられる。
ただし、現在のCMOSセンサーを使った電子シャッターには大きな欠点が1つある。それは「ローリングシャッター歪み」と呼ばれる現象で、一番上のラインから一番下のラインまで順次読み込むため、最初と最後でタイムラグがあり、その分歪んで写るのだ。
ただ、そのタイムラグをギリギリまで小さくする(速度を上げる)ことで歪みを減らす動きが出てきた。ソニーは「アンチディストーションシャッター」という名で「α9」や「α1」で採用したもの。これだと電子シャッターでも歪みがかなり軽減される。
ニコン「Z 9」では完全にメカシャッターをなくし、電子シャッターのみにしてしまった。
最近はEOS R3やOM-1などハイエンド機を中心に高速なCMOSセンサーが採用されつつあり、歪みがゼロになるわけじゃないけど、かなり気にならないレベルに達してるし、シャッター音を出してはいけない現場では電子シャッターの性能向上は実にありがたい。
手元にあるカメラで撮り比べてみた。
メカシャッターと電子シャッターを併用し、用途に応じて両者を簡単に切り替えて使い分ける時代が来ているのだ。
どうあがいてもミラーレス一眼が不利なのはバッテリーの持ち。
デジタル一眼レフは一眼レフとして使う限り、大きく電力を消費するのはイメージセンサーに露光させる撮影の瞬間と、背面のモニターで再生したり設定したりするとき。
ミラーレス一眼は常時センサーに露光させ、常時EVFか背面モニターを点灯させて撮影するので、その分バッテリーの消費は大きい。
同じバッテリーを使用するキヤノンの「EOS-1D X Mark III」と「EOS R3」で比べてみると、ファインダーの場合、EOS-1D X Mark IIIが約2850枚なのに対し、EOS R3は約620枚と約1/4になる。光学ファインダーとEVFの違いだ。
この差はいかんともしがたいので人によっては何らかの工夫(予備バッテリーを多く持つなり、大容量のモバイルバッテリーで給電するなり)が必要になる。
一眼レフとミラーレス一眼で違いが大きい点を4つピックアップしてみたのだけど、バッテリーを除いた3点をみると、ミラーレス一眼がデジタル一眼レフに置き換わることができる段階に来てる。
デジタルカメラとして性能を追求すると、フィルム時代に特化した構造である一眼レフよりも物理的な制約が少ないミラーレス一眼の方が理に叶っており、そちらへ進むのは当然なのだ。
7月の報道では「ニコン」が俎上に上げられていたのでニコンの話をするけれども、そのニコンは2021年のZ 9でメカシャッターすら廃した「これぞミラーレス一眼」という姿を示してくれた。
ニコンは以前から今後はミラーレス一眼に注力するといっていたわけで、逆にニコンが「これからも一眼レフが主力です」といったとしたらそっちの方がニュースになるレベルなのだ。
世間ではニコンはミラーレス化が遅れたといわれているが、どこよりもミラーレスらしいミラーレスを投入し、性能的にも周囲のプロカメラマンの声を聞く限り、非常に評判がいい。
ミラーレス一眼は一時的な流行、あるいは一般ユーザー向けの機構で、カメラの本丸は一眼レフだ、と思い込んでると見誤る。
やっと一眼レフ時代のレンズ資産や一眼レフに慣れた多くのユーザーを抱えていてもなお、ミラーレス一眼を主力に据えられる段階に来たのだ、と考えるのが正解だろう。
じゃあ、ニコンやキヤノンはもう一眼レフは作らないのか、というと、それは分からない。エントリー機はもう作らないだろうが、一眼レフ事業を他社に譲渡するとか、その技術を捨てるといったわけじゃない。
その辺は日経クロステックの記事が伝えている。
イメージセンサーやデジタル処理技術は進化し続けるわけだから、市場のニーズによっては何年かあとにマイナーチェンジみたいな形でデジタル部をリニューアルした後継機が登場する可能性はあるだろう。
まあ、カメラには「撮影する」楽しさもあり、そちらを重視するなら機械の動作が手に伝わる一眼レフも捨てがたいが、徐々に趣味の世界のものになっていくと思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR