デジタル庁設立から9月1日で1年がたち、同庁が公式Webサイトで、これまでの成果と今後の方針を発表した。この1年でマイナンバーカードの保険証利用、新型コロナワクチン接種証明アプリの運用などの施策を実行してきた。
デジタル庁の構想は2020年に菅義偉首相(当時)の政策の一つとして持ち上がった。同年5月には設立に向けた準備室を開設。準備段階では、民間人材の募集が話題になった。事務方トップである「デジタル監」には石倉洋子氏が就任した。
石倉デジタル監は9月1日のデジタル庁発足式で「私はデジタルの専門家でもエンジニアでもない」と発言したことが話題になった。
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10月には、マイナンバーカードの健康保険証としての利用をスタートした。医療機関において、保険証の代わりにマイナンバーカードを身分証明に使える制度だ。
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また、日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」で採用するクラウドサービスも10月に選定した。採用したのは「Amazon Web Services」(AWS)と「Google Cloud Platform」(GCP)で、ネット上では「なぜ国産クラウドではないのか」「日本の産業を育成する気はないのか」といった声も上がっていた。
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12月には新型コロナワクチン接種証明書アプリをリリースした。スマートフォンを使えば数分で電子証明書の交付が受けられる仕組みのアプリ。9月に仕様案を公開し、寄せられた意見を受けて仕様を調整した部分もある。
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デジタル庁が策定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」も、12月に閣議決定された。「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」というスローガンのもと、社会のデジタル化に向け、政府が実施すべき施策を示した。
22年に入り、4月にはデジタル庁が中心に推進してきた「キャッシュレス法」が成立した。交通反則金などの行政手数料をクレジットカードなどのキャッシュレス決済で支払えるようにする法律で、11月に施行する。
4月にはデジタル監の交代もあった。石倉氏が体調不良で退任し、2代目デジタル監にはUX(ユーザー体験)の専門家である浅沼尚氏が就任した。
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6月にはデジタル臨時調査会が「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」を策定した。社会のデジタル化に向け、さまざまな分野の法令・政令などのデジタル化規制につながる記述を見直す取り組みについて記述している。
ネガティブなニュースもあった。21年9月には、石倉デジタル監が画像素材サイトの画像を利用規約に反して使用していたことを謝罪した。11月と22年4月にはメールの誤配信による情報流出事案が発生し問題になった。
デジタル庁は今後、各種プロジェクトの組織化や目標設定による施策の実行、ベンダーと効率よく連携できるサービス開発環境の整備、組織力の強化に向けた採用・経営企画力の強化などを進めるとしている。
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