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ソニー、「匂い提示デバイス」開発 まずは医療向け VRへの応用も(2/2 ページ)

» 2022年10月05日 18時00分 公開
[石井徹ITmedia]
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実際に嗅いでみた

 発表会では「シナモンやカラメルのような甘い匂い」と「桃のような甘い匂い」「汗や納豆のような汗臭い匂い」が体験できた。会場での匂いサンプルは、従来から使われている臭覚検査用の匂いを封入したものという。

 シナモンやカラメルはそのままで、映画館で嗅ぐような、ねっとりとしたキャラメルフレーバーの香り。桃はフルーツのみずみずしさと甘ったるい感覚、汗くさい匂いはじっとりとしたもので、納豆の匂いに近いと感じた。

 従来の嗅覚検査では、被験者が選ぶ選択肢は「甘い香り」のような抽象的なものが一般的だそうだが、ソニーの製品ではより具体的な選択肢を画像とともに表示し、被験者にとっての負担を減らす工夫をしているという。このあたりは、医療従事者と連携して検査手順を開発しているとのこと。

価格は230万円

 NOS-DX1000は2023年春の発売を見込む。嗅覚測定大手の第一薬品産業と提携し、医療機関や研究機関向けの販売を行う予定だ。本体の想定価格は約230万円、交換用のカートリッジは一式20万円程度としている。

発表までのスケジュール

 2023年の発売当初は医学的な診断には利用できない「研究用」という扱いで販売される。発売後に、嗅覚測定用のカートリッジについて、医薬品としての認定や、保険適用の診療でも扱えるような認定取得を目指すとしている。医薬品として承認された場合、嗅覚検査がより簡素な設備で行えるようになるため、視力検査のように、健康診断での大規模な実施も期待できるという。

 なお、保険適用の審査は、カートリッジ部が既存の嗅覚測定用の医薬品と同等の検査水準を確保できるという認定の取得を目指すものとしている。ソニーによると、機器本体は「医療機器としての認定取得は不要」という判断を日本の薬事担当当局から得ているとしている。

マーケティング調査やエンタメ用途への応用も

 匂いを提示する技術について、ソニーは医療以外の分野への応用も見込む。具体的には、マーケティング調査とエンターテインメント分野での活用を想定しているという。

 マーケティング調査では、例えば化粧品や飲み物の匂いのサンプルを示して、消費者の好感度を調査するといった用途をそうてい。

 エンターテインメント分野では「バーチャル空間での嗅覚の活用の可能性を社内で検証している」(ソニー 新規ビジネス・技術開発本部 副本部長櫨本修氏)という。例えばソーシャルVRは離れた場所で同じ映像や音を体験する技術といえるが、匂い提示技術によって、“匂い”を共有するという新たな体験を追加できるという。

 医療分野以外への展開について、具体的な提供時期やどのような形となるかは未定としている。ソニーではオープンイノベーションとして、外部の企業などをパートナーとして迎えて共同でサービス開発を行う方針だ。NOS-DX1000の匂いカートリッジについては、嗅覚検査用のもの以外に、独自の香料を封入するようなカスタムメイドサービスも提供するとしている。

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