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携帯の大規模障害にどう備える? フルローミングかデュアルSIMか キャリアと官庁の考えは房野麻子「モバイル新時代」(2/4 ページ)

» 2022年11月14日 11時07分 公開
[房野麻子ITmedia]

「呼び返し」の必要性が焦点に

 第1回会合では検討事項が整理されたほか、標準技術に準拠した方式に基づいた、緊急通報発信のみのローミング、電話・データ通信をも含むフルローミング、SIMなし発信を行う場合、それぞれのパターンについての動作を、通信事業者の業界団体である電気通信事業者協会(TCA)が説明。問題点などを指摘した。

各ローミングのメリット・デメリット。第1回会合 TCAの資料より

 例えば、緊急通報のみのローミングや、SIMが入っていない端末からの発信の場合、緊急通報受理機関からの「呼び返し」(折り返し電話)ができない。しかし、日本では緊急通報で呼び返しができなくてはならない。これは法律で決められている。

携帯電話の緊急通報では位置情報を送信できること、受理側から呼び返しできる機能を持つ必要があることが法律で定められている。第1回会合 総務省事務局の資料より

 第3回会合で緊急通報の対応について説明した警察庁、消防庁、海上保安庁も、呼び返しは「不可欠」との立場だ。特に海上保安庁は、緊急通報を受理した場合、ほとんどの場合で呼び返しを行っているという。船は海流に乗って動くので、通報時に端末のGPSで位置を把握しても、時間が経つと船は移動してしまい、通報者にすぐたどり着けないことがあるという。

緊急通報受理機関の警察庁、消防庁、海上保安庁は呼び返しの重要性を主張。フルローミングを希望している。第3回会合 消防庁の資料より

SIMなし端末からの通報は位置情報がないこと、呼び返しができないことを懸念。いたずら電話や、DDoSならぬTDoS(Telephony Denial of Service)攻撃のリスクもある。第3回会合 海上保安庁の資料より

 ただ、3者は「通報自体ができないよりは、呼び返しなしの緊急通報でもできた方が良い」という姿勢も示している。

 電話・データ通信も含むフルローミングについては、呼び返しはできるが、ユーザー自身で他社ネットワークに接続するための設定操作が必要だったり、他社ユーザーによってネットワークがひっ迫したりする懸念が指摘された。また、加入者データベースが被災、あるいは障害がある場合、現状の標準技術に準拠した方式ではローミングができない。KDDIの通信障害は加入者データベースが輻輳(ふくそう)状態になったことで大規模障害になったが、標準の仕様ではローミングできず救済できないことになる。

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