2021年のInter BEEでは、このオンプレミスシステムであったKAIROSの、クラウド版が展示された。オンプレミスのサーバ上で動いていたソフトウェアを、クラウド上で動くようにしたものだ。入力数はオンプレミス型の半分になるものの、できることは同じである。
そして22年の6月には、「KAIROSクラウドサービス」として提供を開始した。サブスクリプション型なので、初期投資が必要ないというのが、従来のハードウェアスイッチャーとは全く異なるところである。
映像ソースは、プロ用カメラにクラウド映像伝送システムの「LiveU」を組み合わせたり、専用アプリをインストールしたスマホやタブレットが使用できる。クラウド上に集まった映像や、サーバ上にアップロードした音楽・テロップなどを組み合わせてKAIROS上で合成し、そのままクラウド上からネット配信する。
オンプレミス版KAIROSはどちらかといえば放送局クラスの大型ソリューションだが、KAIROSクラウドサービスは放送向けというよりは、ネット中継用のシステムである。つまりイベント事業者が自ら企画して、中継・配信事業に乗り出すという場合のシステムだ。
例えば柔道や空手の交流試合などは、以前なら保護者や関係者が武道場の下に降りて、近くで観戦・応援することができた。だがコロナ禍ではそういうわけにもいかず、保護者は送迎だけしかできないというケースもある。そういう場合に、複数の試合会場を網羅できるネット中継を主催者側が実施することで、ある意味ファンサービス的なつなぎ止めが可能になる。KAIROSクラウドサービスなら、カメラマンやオペレーターは別途依頼するとしても、中継設備はほぼゼロでスタートできる。
KAIROSクラウドサービスは、これまでスタンダードプランとして、月に8時間のライブ配信までなら月額20万円(税別)の基本プランで利用できた。この12月12日からは、月に36時間のライブ配信が可能なプレミアムプランが月額55万円、カメラ映像をクラウドにアップロードして管理するだけのエントリープランがキャンペーン価格で月額3万円から利用できる。
パナソニックは、監視用リモートカメラでトップシェアを誇り、そのノウハウを放送用リモートカメラに生かした。KAIROSがここまで先行できたのは、すでに自社のIPリモートカメラがあり、その入力から後ろにリソースを集中したからである。IPによってこれまでの業界地図が塗り変わることをいち早く察知し、ポジション取りをした結果といえるだろう。
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