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“SF思考”のビジネス活用広がる 事例が続々 22年の「SFプロトタイピング」まとめと展望「SFプロトタイピング」で“未来のイノベーション”を起こせ!(2/2 ページ)

» 2022年12月28日 16時30分 公開
[大橋博之ITmedia]
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展示会

 これまでも実際に販売しない製品の展示は一般的で、例えばモーターショーでは未来を具現化したコンセプトカーをお披露目していました。同様に、いくつかの企業がSFプロトタイピングから発想した製品を展示しました。

SFプロトタイピング展のWebサイト SFプロトタイピング展のWebサイト

企業

 SFプロトタイピングを活用した主な企業をリスト化してみました。社内外への展開状況やイベント方式など、方法や手法は異なれどさまざまなチャレンジをしています。一部2021〜2022年より前の事例を含んでいますが、一覧としてまとめました。

パナソニックが実施したSFプロトタイピング「SF小説から未来の時間をヨム」 パナソニック「SF小説から未来の時間をヨム」のWebサイト

官公庁

 SFプロトタイピングを活用するのは、企業だけではありません。官公庁や自治体も採用しています。この連載でも取材した東京都下水道局や農林水産省の取り組みは、注目を集めた事例でした。

ワークショップやセミナー

 SFプロトタイピングの認知が広まるにつれて、ワークショップやセミナーも増えました。教育の一環として活用している事例も多く、ビジネス以外のメリットも注目されています。

東京大学と横河電機が実施したSFプロトタイピングのワークショップ 東京大学と横河電機の取り組み

2023年からSFプロトタイピングはもっと広がる

 SFプロトタイピングに取り組んでいる企業や団体を見ると、「SFは娯楽」という捉え方ではなく、SFで未来を考察し、ビジネスに役立てようとしています。しかも大手企業ほど積極的に活用しているようです。いまは「未来」がバズワードになっており、企業にとっては未来を考えることが重要になっているのでしょう。

デメリットはないのか?

 僕がSFプロトタイパーとして活動していると「SFプロトタイピングにデメリットはないのか?」という質問を受けることがあります。いま現在の活用事例を見る限り、デメリットがあるようには思えません。むしろ積極的に活用するメリットが大きいように思えます。

 確かに従来は、SFプロトタイピングに取り組んで外部に発信しても広がらないケースが多々ありました。そもそも何らかの不安で非公開にしているケースもあると聞いています。

 しかし2023年からは、SFプロトタイピングの事例を広く公表しようとする企業が増えると考えています。実際、SFプロトタイピングを企業プロモーションや消費者とのコミュニケーションに活用するといった取り組みも増えています。

 この連載名にあるように、SFプロトタイピングは未来のイノベーションを起こすためのツールです。デメリットを危惧して公表を控える企業と、SFプロトタイピングの実践内容を公表する企業のどちらがイノベーティブなのか考えると、自ずと答えが見えてくるようです。

 別の質問では「SFプロトタイピングに取り組みたいが、メリットがはっきりせず、上司を説得できない」という悩みを聞きました。メリットを明確にするのが難しいのは事実です。しかし、ツールの一つであるSFプロトタイピングにすら取り組まないなら、未来を考える意思が希薄だ、未来の創造を諦めているのかと思われかねません。

未来を現実の延長ではなく、SFを通して描く

 2023年以降、SFプロトタイピングが一過性のブームで終わるのか、それとも定着して発展していくのかを見届けなければなりません。そのためにも、この連載では引き続きSFプロトタイピングを追い続けます。

SF作家と人工知能学者が執筆した「AI 2041 人工知能が変える20年後の未来」 書影:文藝春秋のWebサイトより

 ――こう記事を結ぼうと思って手を止めたタイミングで、新しい書籍刊行のニュースが飛び込んできました。人工知能学者の李開復(カイフー・リー)氏と、SF作家の陳楸帆(チェン・チウファン)氏が共同執筆した「AI 2041 人工知能が変える20年後の未来」(文藝春秋)です。

 いまやテクノロジー分野で世界をリードする中国の科学者とSF作家がタッグを組み、AIによって変わる2041年の未来を描いています。20年後の未来を現実の延長線で考えるのではなく、SFというフィルターを通して描き出すユニークなチャレンジになっています。

 未来を予測するビジネス書籍は数え切れないほどありますが、今後はSFを使って未来を解くビジネス書籍が増えていくのかもしれません。

 SFプロトタイピングに興味がある、取り組んでみたい、もしくはすでに取り組んでいるという方がいらっしゃいましたら、ITmedia NEWS編集部までご連絡ください。この連載で紹介させていただくかもしれません。

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