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「My電気」がある世界 折りたたみソーラーとポータブルバッテリーで電気を調達して分かったこと小寺信良の「IT大作戦」(3/3 ページ)

» 2023年01月13日 16時30分 公開
[小寺信良ITmedia]
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「My電気」で変わる意識

 個人ベースでのソーラーパネル発電と蓄電池は、これから数年、熱いテーマになるものとにらんでいる。その理由は、系統電力の電気料金が2021年9月ごろから値上げが始まり、現在もなお収束の傾向は見えないことにある。

 日本の電力は、原発の停止によりほとんどが火力発電に頼っているところだが、CO2削減のために石炭よりも天然ガスの利用が高い。だが天然ガス産出トップはロシアで、入手が難しくなった。加えてこの円安で輸入価格がつり上がり、そう簡単に燃料費の高騰は収まりそうにない。

 2016年の電力自由化により、いわゆる「新電力」として小規模事業者の電力参入が相次いだが、帝国データバンク2022年11月の調査によれば、新電力で事業撤退・停止している事業者は21%にも上っている。2022年度上半期決算では、すでに大手電力会社10社のうち9社が赤字転落しており、今後は燃料費の価格推移をにらみながら、さらなる価格転嫁が行なわれる可能性は否定できない。

 そうなれば、当然節電意識は高まる。2011年東日本大震災による電力逼迫(ひっぱく)の際は、夏の電力需要を1年2年押さえればどうにか乗り越えられるという、一時的なものだった。だが今回は電力が足りないというより、高くて使えないという、生活に直結した普段使いにフォーカスが当たる事になる。

 これは、ソーラーパネルと蓄電池は何年で元が取れるか、という話ではない。自前で発電装置を用意するコストを考えれば、系統電力のほうがまだ全然安あがりなのだ。ポイントはそこではなく、「My電力」を無駄なく使おうという意識が芽生えるため、無駄な電力消費はどんどんカットしていこうという意識が働く。

 例えばスマートスピーカーなどは、いつでも声をかけられれば反応できるようにするため、常に通電状態にある。日に何度かしか使わないもののために、何Wかの電力をずっと消費し続けているわけだ。いつでも音声で家電を操作できるのは未来の姿かもしれないが、電力がタダ同然の米国とは違い、日本ではもはやぜいたく品となるかもしれない。

 例えば筆者宅ではAmazon Echo Studioを常時2台動かしていたが、2つで10Wぐらい食っている。1日で音楽を再生する時間は2時間程度しかなく、22時間は無駄に10W使ってきたのである。これもRiver 2につないで出力差を調べてみて、初めて気づいた事だ。そのため、電力を個別にカットできるテーブルタップにつないで、使う時だけONにしている。

 壁掛けのEcho Show 15も、常時12Wぐらい消費している。気が付くと嫁にコンセントを抜かれているという不満の日々が続いていたが、今ではあれは正しかったのだと思えるようになった。

 これまでのようになんとなーく薄ーく広ーく電気を使うのではなく、個人ベースでのソーラーパネル発電と蓄電池による「My電気」をここぞというときにドバッと使うほうが、生活が面白い。

 マンション暮らしでは屋根にソーラーパネルを積むわけにも行かずいろいろ諦めていたところだったが、ベランダにパネルを立てかけるだけでこれほど発電できるとは思わなかった。今はまだ仮設だが、そのうち何かでちゃんとした架台を組むなりして、規模を大きくしてみようかと思っている。

【訂正履歴:2023年1月16日午後16時 本文の一部に製品名の表記ミスがあったため訂正いたしました】

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