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「M2 Pro」に乗り換えるべきか……? M1 ProなMacBook Proユーザーが気になったこと

» 2023年01月21日 16時00分 公開
[山川晶之ITmedia]

 1月17日の深夜に発表された新型「MacBook Pro」。最大の特徴は何といっても新チップ「M2 Pro/Max」を搭載していることだ。Appleによると、CPU性能はマルチコアで最大20%、GPU性能は30%向上しているという。そんなAppleの最新チップは、旧型になった「M1 Pro」を搭載するMacBook Proユーザーの筆者にどう見えたのか、感じたことを簡単に紹介したい。

新型「MacBook Pro」

 筆者が所有しているのは、下位バージョンのM1 Proを搭載したMacBook Proの14インチモデル。M1 Proには2種類のバージョンがあり、8コアCPU/14コアGPUを搭載したのがそれだ。メモリは16GB、SSDは512GB。いわゆる“吊るし“(既製品)の一番下のモデルに当たる。

筆者が持つM1 Proを搭載したMacBook Pro

にじみ出るマイナーアップデート感

 M2 Proも、2種類のバリエーションがあり、10コアCPU/16コアGPUと、12コアCPU/19コアGPUのモデルが存在する。CPUは高性能コアと高効率コアに分かれており、10コアモデルは高性能コアが6コア、高効率コアが4コア。12コアモデルはそれぞれ8コアと4コアになる。

「M2 Pro」
M2 ProのCPUは最大12コア(高性能コア×8、高効率コア×4)

 実性能でどれほど差が出るかは不明だが、発表を受けて感じたのが「思ったより差分が少ない」ことだ。まず、プロセスルールは第2世代になったものの引き続き5nmを採用する。TSMCの3nmラインを初めて使用するチップになるのでは? というウワサも一時期あったが、違ったようだ。ただ、省電力性能はより向上したようで、16インチモデルはMac史上最長のバッテリーとアピールしている(といっても21時間から22時間に増えたとかである)。

 CPUは、M1 Proが8コア/10コアだったため、2コアずつ増えたことになる。メモリ帯域に余裕があれば、コア数が多いほど性能向上が期待できるが、今回増えた2コアの正体は「高効率コア」。パワフルに処理する「高性能コア」の数はM1 Proと変わらない(これはM2 Maxも同様)。キャッシュやクロック数など強化されているとは思うが、大きなパフォーマンスアップにつながるかといえば疑問が残る。

 GPUは、14/16コアから16/19コアに増え、より大きいL2キャッシュを搭載して性能向上を図ったという。M2も、GPUを8コアから10コアに増やし、L2キャッシュを増量したことで大幅なパフォーマンスアップを実現したが、M2 Proに関しては母数からするとコアの増加分が少ないように感じる。あとどうでもいい話だが、PC関連で19コアという数字を個人的にあまり見ないので、何となく収まりが悪い気がする(気がするだけだ)。歩留まりの関係で1コア減らしたとかだろうか。

 メモリも刷新されなかった部分だ。M2 Maxは最大96GBまで増やせるようになったが、CPUとGPUが使う帯域幅はM2 Proが200GB/s、M2 Maxは400GB/sと変わっていない。つまり「LPDDR5」を引き続き採用しているものと思われる。後継規格として帯域幅が大幅に向上した「LPDDR5X」が控えており、量産の話もチラホラと聞こえてきてはいるが、今回のアップデートだと現状の帯域でも十分に足りるということなのだろう。

メモリ帯域などは見覚えがある……

個人的にはまだ見ぬ「M3 Pro」か?

 大御所テクニカルライターの大原雄介先生は、M2発表時に寄稿していただいた記事において、昔のIntelがやっていた「Tick-Tock」戦略を引用し、M2はアーキテクチャの刷新ではなくてリフレッシュのバージョンではないかと指摘していた。個人的には、M2 Pro/Maxにも同じような印象を持った。Appleが出しているパフォーマンス比較を見ても、そこまで大きな差がないように見える。

Appleが公表しているM2 Pro/Maxのパフォーマンス比較。15.9倍や11.6倍といった数字が並んでいるが、これはIntel Core i7を搭載した旧型MacBook Proとの比較だ

 と、この原稿を書いているタイミングで、M2 Pro/Maxのベンチマークとされるスコアが出てきた。14インチのM1 Pro/M2 Proだと、CPU性能は1.4倍、GPU性能は1.2倍伸びているという。ただ、M2 Proの下位バージョンのスコアはなく、筆者が持っているマシンとの直接的なパフォーマンス差は分からない。それに発売前の情報で真偽については不明であり、実際の評価はのちのち判明するだろう。

M2 Pro/Maxとされるベンチマークスコア(出典:Mac OTAKARA

 旧型になったとはいえM1 Proがパワフルなチップに変わりはない。一番下といっても、M2よりも性能は高くて処理速度に特段の不満はない。画像のレタッチも4Kの映像編集もサクサクだ。また、肝心のMacBook Pro本体がチップ以外あまりアップデートがなく(Wi-Fi 6Eや8K出力に対応など)、もし今MacBook Proを検討している人でコストが気になるなら、値下げされたM1 Pro/Maxの整備済製品を狙うのもアリかもしれない。M2 Proのベースモデルは28万8000円スタートと、M1 Proモデルからさらに高くなっている。

 以上の理由で、筆者はまだ見ぬ「M3 Pro」までM1 Proを使い続けることに決めた。もちろん、M3 Proが“Tock”のようなアップデートがあればの話ではあるが……。Appleさん大幅なアップデート期待してまーす!

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