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追い込まれた楽天モバイル、黒字化に向けなりふり構わず 楽天市場の出店者にも契約依頼房野麻子「モバイル新時代」(2/3 ページ)

» 2023年01月31日 15時25分 公開
[房野麻子ITmedia]

 22年10月まではキャッシュバックやポイントバックを提供する猶予期間だったが、11月からは全ユーザーが有料プランの契約者になり、収益自体は改善している。ARPUも22年第1四半期が837円のところ、第3四半期は1472円まで上がってきた。

 4000円前後になる他の3キャリアに比べるとまだかなり低いが、前述の通り、楽天モバイルユーザーは、グループ内サービスの利用や楽天市場の購買額が非ユーザーよりも多い。グループ内サービスとのシナジーで通信ARPUの低さをカバーしていけると考えているようだ。

楽天新春カンファレンスでは、楽天モバイルの楽天経済圏へのプラス影響を強くアピールした

 ただ、携帯電話事業の収益は、契約者数とARPUのかけ算になる。ARPUを上昇させるとともに、0円廃止で減ってしまった契約者数を増加させなくてはならない。楽天モバイルが黒字化するには1500万契約以上が必要との見方もある。

 同社が契約者数アップのために注力しようとしているのが地方だ。人口カバー率が95%を超える東京23区では楽天モバイルへの申込率が10%を超えているが、カバー率が低い地方では申込率も低い。地方のエリア拡充が必要と考えているはずだ。

0円廃止でARPUは上昇したが、契約者は減少してしまった

 そこで狙っているのが、プラチナバンド。22年10月の電波法改正で、割り当て済みの周波数を比較審査で再割り当てする仕組みが導入されることを受け、楽天モバイルはプラチナバンドの再割り当てを強く要望している。総務省の「携帯電話用周波数の再割り当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」では、周波数の移行期間や移行費用の負担の在り方などを中心に白熱した議論が行われた。

 タスクフォースでの議論はドコモ、KDDI、ソフトバンクの既存3社と楽天モバイルの主張がほぼ平行線のまま終わったが、まとめられた報告書は、楽天モバイルの要望がほぼ受け入れられた形となった。

 一方で、既存3キャリアが持つプラチナバンドを譲渡するのではなく、700MHz帯の挟帯域を携帯電話の4G用周波数として利用してはどうかという提言がドコモから出され、活用の技術的条件について検討を行っている。活用が検討されている700MHz帯は、標準化団体の3GPPでバンド28として国際規格化され、端末や基地局は標準的に対応しているバンド。また、使われていない空きバンドなので、割り当てが決まればすぐに使い始めることができる。

 検討結果は今春、取りまとめられる予定で、この件について楽天モバイルは歓迎の意を示しているが、果たしてプラチナバンド譲渡の代わりになるのかは見えない状態だ。

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