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トンボ鉛筆のデザインペン「ZOOM」が復活 迷走の末に辿り着いた“1本の美学”とは?分かりにくいけれど面白いモノたち(4/8 ページ)

» 2023年03月20日 11時30分 公開
[納富廉邦ITmedia]

ジュラルミン製の軸を持つ「ZOOM C1」

 パッと見には、スッキリした曲線に落ち着いた色調の高級ボールペンといった佇まい。しかし、よく見るとノックボタンは宙に浮いているように見える。そして、素材もアルミのようだが、もっと硬いイメージがある。この軸、実は、筆記具には珍しく、ジュラルミン製なのだ。アルマイト加工で鈍く光る佇まいの重厚さが新鮮。

トンボ鉛筆「ZOOM C1」7700円。浮遊感と塊感という相反するイメージを1本のペンの中で表現している

「本当にジュラルミンが必要かというと、筆記具として考えればオーバースペックです。ただ、このペンの場合、塊感と浮遊感という相反する2つを1本の中で表現したかったんです。アルミというと、アルミ缶のイメージが強くて、柔らかいものに見えてしまうと思うんです。その点、鉄鋼材に匹敵する硬さがあるジュラルミンだと塊感が出るし、ソリッドな感じにもなったと思います。それを表現するために、実は軸の曲線も、1つのアールではなくて、複数のアールを細かく組み合わせています。ただ、それも感覚的なものなので、手で描いてみて、何個もモデルを作ってもらって、それを手にしないと分からないんです。よく設計の人たちが付き合ってくれたと思います」(国府田氏)

「ZOOM C1」のジュラルミン製の軸。独特の深みのある質感は、アルミニウムやスチールとは違う深みがある

 塊感があって、手にした時にしっくりくる曲線を作るために、ほとんど見た目は同じ軸をいくつも試作したのだという。製造しやすさよりもデザインを優先するというのは、文具メーカーではかなり珍しいのだが、この場合、デザイン・コンセプトを優先するシリーズなので、こういうこともできた。ずっと、デザインペンに取り組んできたトンボ鉛筆ならではといえそうだ。

 そして「ZOOM C1」の大きな特長である、浮かんで見えるノックボタンについても、イメージを色々と描いてみる過程で思いついたのだそうだ。

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