「最初のZOOMは、とにかくビックリさせようというのがアイデアの中心にありました。世界一細いとか、世界一太いとか、世界一薄いとか、形で驚かせようとしていましたね。それは結構上手くいって、話題にもなったし、かなり売れたんです」とトンボ鉛筆広報担当の川崎氏は話す。
実際、筆者の手元には初期のZOOMシリーズが何本かあるのだが、調べてみるとネット・オークションなどで、かなりの高値が付いたりしている。中でも、多分、今後もこういう形のボールペンは出てこないのではないかと思われる、太くて丸っこい、通称エッグ「ZOOM858」は今でもお気に入りのペンの一つだ。
しかし、バブル経済崩壊後の'90年代に入って、高級筆記具は売れなくなる。ブランド製品人気も落ち着いて、ZOOMシリーズは苦戦を強いられる。それでも、単にブランド・ネームに寄り掛かっただけの製品とは違うため、根強い人気があり、シリーズ自体はひっそりと継続する。
「2010年代に、不況慣れといいますか、ちょっと良いものが欲しくなるという時代が来て、そこでZOOMを中心に、自社製のデザイン性の高い筆記具を集めて『トンボ・デザイン・コレクション』という企画を起ち上げました。これが、少し上手くいって、全国のお店に専用の什器などを置いてもらいました」(川崎氏)
この頃の名作といえば、部品調達の都合で惜しくも生産中止になった「XPA」がある。コンパクトな外見だが、軸を引っ張ると長くなり同時にペン先が露出。そのまま筆記できる上に、加圧式リフィルの採用で、上向きや水の中などでも書ける名品だった。
ただ、専用什器ありきの企画なのに、実際の価格は高級といっても2000〜3000円程度というバランスの悪さや、そもそも高級価格帯のペンは売れないという状況の中で、デザイン・コレクションは中止され、再び、ZOOMブランドに戻すことになった。
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