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» 2023年03月20日 11時30分 公開

トンボ鉛筆のデザインペン「ZOOM」が復活 迷走の末に辿り着いた“1本の美学”とは?分かりにくいけれど面白いモノたち(1/8 ページ)

「空白を、ノックする」「いくつもの深さを持つ、透明」「書かなくても触れたくなる」──これらは2月にリブランディングしたトンボ鉛筆「ZOOM」のキャッチコピー。一時は迷走したという人気シリーズは、いかに再生したのか。開発陣に話を聞いた。

[納富廉邦ITmedia]

 今年2月、日本が誇るデザイン筆記具のブランド、トンボ鉛筆の「ZOOM」シリーズがリブランディングされて、新しいブランドとして復活した。デザインを重視したペンといえば、ラミーやアクメ、ヴィスコンティといったメーカーがあるが、デザイン・コンセプト自体をブランド化したシリーズというのは世界的にも珍しい。そもそも、「デザイン・ペン」というジャンルは、基本的には存在しない。

トンボ鉛筆ZOOMシリーズ、左から「ZOOM C1」(7700円)、「ZOOM L1」(4400円)、「ZOOM L2」(3520円)。写真は全てボールペンだが、「C1」と「L2」にはシャープペンシル・タイプもある

 その前例のないことを1986年以来、ずっと続けてきたトンボ鉛筆が、今回発表した新しいZOOMは3種類。ノックボタンが浮いて見えるジュラルミン・ボディの低粘度油性ボールペンおよびノック式シャープペンシル「ZOOM C1」(7700円)、太軸のキャップ式水性ゲルインクボールペン「ZOOM L1」(4400円)、そして加水分解しないしっとり触感と個性的なフォルムの低粘度油性ボールペン及びノック式シャープペンシル「ZOOM L2」(3520円)というラインアップになっている。

1986年に始まった最初のZOOMシリーズは、このようなラインアップで展開した。パッと見ただけでも、とても個性的だったことが分かる

 日本のボールペンは性能は良いがデザインはイマイチという状況が改善され始めたのは、ここ数年のこと。それでも、まだ、ラミーのようなデザインと品質の両方を同じ比重で考えるようなメーカーはほとんど存在しない。そんな日本の筆記具業界の中で、唯一、海外の筆記具メーカーに勝るとも劣らないデザインのペンを発売していたのが、トンボ鉛筆のZOOMシリーズだ。

 ZOOMシリーズが最初に発売されたのは1986年。ブランド全盛の時代で、ギフト用にブランドの名前を印刷しただけのような高級ボールペンが売れていた時代にあって、スタイリング自体がブランドになるような筆記具を作ろうという野心的な発想で起ち上げられた。いわば、老舗ブランドに対するデザイナーズ・ブランドのような立ち位置で、ペンを作ろうというアイデアだ。

最薄をうたった「ZOOM606」。写真上はシャープペンシル、下はボールペン

 このシリーズがすごいのは、デザインで勝負する筆記具ブランドを作るに当たり、外部のデザイナーに頼らず、インハウスのデザイナーを起用したこと。そして、筆記具の常識を壊すようなデザインの筆記具を次々と発表したこと。

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