「最初は、とにかくキレイな形を描いてみようというところから始めました。そこに抜け感を入れたかったので、軸のカットとか、主観的輪郭線のような見え方とか、そういうのができないかと考えている過程で、ノックボタンのところを切ったような形を思いつきました。色々考えて、クリップを連絡経路に使えば、ノックボタンが浮いているようなデザインにできるというのを思いついた後は、比較的早くデザインは進みました」(国府田氏)
しかし、ノックボタンが軸とつながっていなくて、浮いているように見えるというアイデアと構造ができたところで、どういう造形で浮くと綺麗に見えるかという問題は残る。前例のない形だけに、参考資料もない。「実際に参考にしたのは、照明機器とかオーディオ機器でした。B&O(BANG&OLUFSEN)の製品とか、ヤマギワの製品などを参考にしながら作っていったんです」(国府田氏)。
ノックボタンが円すいの上部を切ったような形になっていて、押すと軸の上部にある穴に入って芯が出て、ボタンから手を放すと、また浮いた場所に戻るという仕掛けは、実際に使ってみると、かなり楽しい。仕掛け自体はシンプルなものだが、それだけに動作は安定していて実用上の問題もない。
一見シンプルに見えながら、実際にはものすごく複雑なことをやっていて、それを感じさせないというのは、ある意味とても日本的といえるような気がする。理論よりも感覚で形を決定していくこと、指や目が感じる微妙な違いを見逃さないこと、デザインと絵画の間を行き来するような作業、それをインハウスのデザイナーが行っていること。そういう諸々が集まって出来たというのは、日本のプロダクトらしいと思うのだ。外部のデザイナーを多用するラミーとの相違点でもある。
「ZOOM L1」は、今までのZOOMのイメージに最も近いといえるだろう。
ZOOMの人気シリーズだった「ZOOM 505」を思わせる、太軸キャップ式の水性ボールペンだ。
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