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KDDI、ソフトバンクもサービス開始 そもそも「デュアルSIM」って何だ?房野麻子「モバイル新時代」(3/3 ページ)

» 2023年03月29日 18時03分 公開
[房野麻子ITmedia]
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デュアルSIMの注意点

 デュアルSIMで複数回線を利用するには、デュアルSIMに対応した端末が必要だ。SIMカードを2枚入れるのであれば、当然SIMカードスロットが2つある端末でなくてはならないし、eSIMを利用したいならそれに対応した端末が必要になる。

 また、物理SIMカードにはサイズがある。現状、ほとんどがnanoSIMカードのはずだが、端末によってはそれよりも大きいmicroSIMカード用のスロットを備えている可能性もあるので事前に確認しておきたい。

 異なる2つの通信事業者を利用するには、端末のSIMロックが解除されている必要がある。eSIMを使う場合も同様だ。21年10月1日以降に販売される携帯電話は原則的にSIMロックがかかっていないが、例外的にSIMロックがかかっているものもあるほか、中古端末はSIMロックがかかっているものも出回っている。SIMロックは解除可能な機種であれば、各キャリアの店頭(有料)やユーザーサイト(無料)で解除できる。

 さらに、デュアルSIMで利用する場合、通信会社が放射する電波の周波数帯と端末が対応する周波数帯が完全にはマッチせず、端末のパフォーマンスを十分発揮できない場合がある。

 例えば、5G用の周波数帯「n79」は、日本ではドコモに割り当てられている。しかしn79はグローバルで見るとマイナーな周波数帯なので、海外メーカーのスマートフォンはn79に対応していないことが多い。そのため、n79に対応していないSIMフリー端末にドコモのSIMカードを挿すと、期待するほどの通信速度に達しない場合がある。

 とはいえ、日本では高速な4Gエリアが充実しているので、使っていて不満を覚えるほどではないだろう。各社共通で使っている周波数もあるので、圏外になることも、まずないはずだ。

 eSIMを利用する場合はさらに注意すべき点がある。eSIMはSIMに書き込むデータを遠隔でダウンロードし、端末内部に書き込むことで利用可能になるため、設定にネット接続環境が必要だ。

 また、QRコードを端末のカメラで読み取る手順を取ることがある。タブレットやパソコンなどQRコードを表示できる他の端末があれば問題ないが、スマホ1台だけの場合はQRコードを読み取ることができない。この場合を考慮して、英数字からなるコードをコピー&ペーストして設定することができるようにはなっているが、少し面倒だ。また、誤ってプロファイルを削除してしまうと設定できなくなり、回復に時間と手間がかかる。eSIMの設定は、リテラシーが多少必要で、まだハードルが高い。

KDDIとソフトバンクがデュアルSIMサービス「副回線サービス」を開始

 通信障害時などのバックアップ回線としては、低容量で安価なプランを提供するMVNOを選択するユーザーが多かったが、3月27日、KDDIとソフトバンクが互いの回線サービスをオプションとして提供する「副回線サービス」を発表したことで新たな選択肢が生まれた。

 KDDIは3月29日からauとUQ mobileユーザー向けにソフトバンク回線を、ソフトバンクは4月12日からソフトバンクユーザー向けにau回線を提供する。なお、auとUQ mobileは同Webサイトかお客さまセンターからの申込みとなる。ソフトバンクはショップで申し込むが、利用できるのはeSIMに対応したスマホのみだ。

KDDIの「副回線サービス」

 料金は両社同じで、個人向けが月額429円、データ容量が500MB/月、音声通話料は22円/30秒、SMS送信料は3.3円/通。法人向けは月額550円、データ容量が1MB/月になるが、通話料とSMS送信料は個人向けと同じだ。

 副回線サービスをMVNOのプランと比較すると、データ容量や月額料金はMVNOと同レベルだが、最大通信速度の遅さが気になる。副回線サービスの個人向けは送受信が最大300kbpsで、法人向けが最大1Mbps。

 mineoが通信速度で選べる「マイそく」プランを大手3キャリアの回線で提供しているが、最大300kbpsのライトプランなら月額660円で、データ容量無制限で利用できる。副回線サービスは非常時に使われることを意識したサービスなのでこの速度でいいかもしれないが、通信障害時だけでなく普段も使う可能性があるならmineoの方が使いやすい印象だ。

 副回線サービスのメリットは、大手キャリアが提供し、コールセンターやショップで相談できるという安心感だろう。しかし通話料まで含めた料金や使いやすさを考慮すると、個人的には副回線サービスよりもMVNOの低容量プランがまだ優位だといえそうだ。

筆者プロフィール:房野麻子

大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、業界動向を追っている。


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